オーストラリアの海というと、世界最大のサンゴ礁がひろがるグレートバリアリーフのような暖かい海を想像しがちですが、すべてがそうではありません。オーストラリアの南部は、南極からくる冷たい海流(南極還流)の影響で意外に水温は低く、年間を通じて16~18℃とあまり変化がありません。
そんなオーストラリア南部の海域にすむ魚たちを見ることができる、葛西臨海水族園「オーストラリア南部」の水槽。今回は、この水槽で愛敬をふりまいている、サザングローブフィッシュをご紹介しましょう。
サザングローブフィッシュは、全長約30センチになるフグのなかまです。フグ目は世界に約 340種が知られており、マンボウやカワハギなども、広い意味では同じグループです。サザングローブフィッシュはハリセンボン科。この科の特徴の一つは、体をおおう、たくさんの「針」ならぬ「トゲ」です。
この「トゲ」は、じつは鱗(うろこ)が変形したものなのです。危険がせまると、大量の海水を飲みこんで体をふくらませ、ふだん寝かせているこのトゲを立てて身を守ります。
サザングローブフィッシュもたくさんのトゲをもっていますが、実際に水槽でトゲを立てることはめったにありません。彼らがふくらむのは、身を守る必要のあるときだけ。水槽では敵におそわれる心配も少ないので、トゲを立てる必要もないのでしょうね。
※サザングローブフィッシュが体をふくらませたようすは、
東京ズーネット「どうぶつ図鑑」でごらんください。
水槽では、2尾のサザングローブフィッシュを展示しています。この2尾、職員のあいだでは「金さん」「銀さん」という愛称で呼ばれています。名前の由来はそのトゲ。「金さん」のトゲは先が黄色っぽく、「銀さん」のトゲは白っぽいのです。葛西の「金さん」&「銀さん」に会いに来てください!
〔葛西臨海水族園飼育展示係 高浜由美子〕
写真上:黄色いトゲの「金さん」
写真下:ごはんちょうだい!
(2006年7月7日)