井の頭自然文化園にある「リスの小径」を出たところに、1本の木があります。6月のある日にその木を見上げてみると、木の実がたわわに実っていました。これがなんの実か、わかりますか?
木の高いところにいくつもありました

近くで見るとこんな感じ

ブドウの房のようにいくつかまとまってついていますが、一つ一つを見てみると黄緑色で丸く、表面には細かな毛があります。さわるとちょっと柔らかい感触です。
じつはこれは、ニホンリスの大好物であるオニグルミの実です。
あれ? でもクルミと言えば、茶色くてしわが寄っていて、さわるととても硬いこんな木の実を思い浮かべるのではないでしょうか。

オニグルミ
写真は、井の頭自然文化園で毎日えさとしてニホンリスに与えているオニグルミの実です。
オニグルミはニホンリスの大好物。与えるとすぐに口にくわえて木に登り、カリカリと大きな音を立てながらこの茶色い殻を割って中身を食べます。

オニグルミを割るニホンリス
同じオニグルミなのに、なぜこんなに見た目が違うのでしょうか? じつは、クルミの実の構造に秘密があります。
木になっているクルミは、緑色の「果皮(かひ)」に覆われた状態です。その中には茶色くて硬い「核」が入っています。「核」を割ると、中にある白っぽい「仁(じん)」が出てきます。

左から、オニグルミの果皮、核、仁(白い部分)
緑色の「果皮」は、ほかの果物でいえばいわゆる果肉の部分で、その中にあるタネが「核」にあたります。つまり、ニホンリスはオニグルミのタネを割り、その中身を食べていることになるのです。
じつは以前、リスに「果皮」のついた状態のオニグルミを与えてみたことがあります。こんなに見た目が違うのだから、そもそもクルミだということに気づかず興味をしめさないかもしれない……と思いきや、リスはすぐに興味津々で近づき、「果皮」を前歯で上手にむしりとっていました。
とりあえず気になったものをかじってみたのでしょうか? それとも、私たちにはわからないクルミ独特のにおいがあるのでしょうか?
クルミの実から果皮をかじり取るリスのようす
「リスの小径」でリスがクルミを割るようすを観察したあとには、ぜひ出口の先にある「オニグルミ」と名前のついたプレートがある木と、クルミの実を探してみてください。クルミの実はこれから夏のあいだにどんどん大きくなり、9月くらいまで見ることができますよ。

「リスの小径」を出たところにあるオニグルミの木
※動画撮影の際には、リスにふだん与えているえさの量を調節し、クルミに異常がないことを確かめたうえで給餌をおこないました。もし園内でクルミの実を拾っても、リスに与えないでください。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 大河原〕
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