ニュース
干潟を調査する
 └─葛西 2025/01/17
 葛西臨海水族園では水族園の目の前にある人工干潟の葛西海浜公園「西なぎさ」で、環境や生きものの生息状況を調べるための調査を定期的におこなっています。奇数月は干潟の砂や泥の中の生きものを調べる「底生生物調査」、偶数月は水中で地曳網を曳いて採れた生きものを調べる「地曳網調査」です。今回は底生生物調査についてご紹介します。

 調査の方法は、5m四方の調査地点で深さ10cm程度の穴を10回スコップで掘ります。小さな生きものもすべて見落としがないように、掘り起こした砂や泥の中を丁寧に調べて記録します。これを砂地2か所、泥地2か所の計4か所でおこない、どの生きものがどれくらいの頻度で見られたかを調べます。


5m四方の調査地点の中で10回穴を掘る

 何もいないように見えるかもしれませんが、砂を掘るとコメツキガニやオサガニといった甲長1cmから3cm程度の小型のカニ類、ヤマトシジミやアサリなどの二枚貝類、イトゴカイ科の一種やツツオオフェリアといったゴカイのなかまなど、多様な生きものが確認できます。また、そういった生きものの巣穴を利用する、ヒモハゼやエドハゼといった、ハゼのなかまが見つかることもあります。

泥の中から見つかった、細長い糸のような
イトゴカイ科の一種
指先に乗せたツツオオフェリア

 時期によって見られる生きものの傾向に違いがあります。たとえば、9月にはハマグリやオキシジミといった、二枚貝類の殻長が5cm以上ある大型の個体が多く見られましたが、11月は二枚貝類が少なく、殻長1cm以下の小型の個体がほとんどでした。逆にイトゴカイ科の一種は、通年で目撃されますが、とくに11月の調査で多く見られました。

 このように調査を継続して実施し、その結果を記録することで、季節ごとの変化を調べています。調査を何年も続けることで、観察される生きものの種類や数の変化、さらには環境の変化との関係性などを長期的に把握することができます。


調査で見られた大型のオキシジミ

 みなさまもぜひ、お近くの干潟に足を運んで生きものを探してみてください。しばらくじっとして砂の上をよく見てみると、カニのなかまが見つかったり、砂の中を探してみると、ゴカイのなかまが見つかったりするかもしれません。実際にその生きものがくらしている環境で観察をしてみると、また違った発見がありますよ。

 この調査の結果は、毎年「SEA LIFE NEWS」の4月号でご紹介をしています。こちらのページからも、バックナンバーも含めてご覧いただけます。

〔葛西臨海水族園教育普及係 加藤ソフィー〕

◎関連記事
“目の前の渚”をのぞいてみると…(2020年03月27日)
地先、「西なぎさ」での地曳網調査(2021年08月27日)

(2025年01月17日)


ページトップへ