葛西臨海水族園では、展示や教育活動に生かすことを目的に、目の前に広がる人工干潟「西なぎさ」で1994年から定期的に生物調査をおこなっています。そのひとつが、隔月で実施している地曳網調査です。今回はこの調査のようすをお伝えします。
地曳網とは左右に広がる袖網と細長い袋網からなる網漁具です。沖で網を広げて、岸まで曳くことでその場所にいるさまざまな生き物を採集することができます。水族園の調査で使用している網は小型で、職員2名で曳くことができます。網の目は細かくしており、小さな生き物も逃さないつくりとなっています。
地曳網を曳くようす
採集した生き物は標本にして水族園へ持ち帰り、検索図鑑や同定用に準備した写真を見ながら種類を調べて仕分けます。例年冬の調査で採集できる生き物は数種類、採集数も数匹程度です。しかし、春から夏の多いときには、干潟を利用する魚を中心に20種類以上の生き物が入網し、採集数が2000匹を超えることもあります。種類がわかったら、数や大きさなどを記録し、調査終了です。
小さな稚魚も詳しく種類を調べます
調査結果は「東京の海」エリアの「葛西の海 2」水槽で掲示しており、水槽では調査時に採集された生き物の一部を展示しています。8月24日におこなった調査では、ギマやマゴチなどの稚魚が採集できました。おそらく6〜7月ごろ生まれたこれらの卵や稚魚が「西なぎさ」へ流され、成長しているのでしょう。「西なぎさ」は浅く、大型の魚が入りにくいため、小さな魚が成長するにはとてもいい環境なのです。今回の調査で採集した生き物は、9月初旬から展示予定です。
「葛西の海 2」水槽では、現在の「西なぎさ」のようすを発信しています
また、水族園が偶数月に発行している情報誌「SEA LIFE NEWS」では、「なぎさNEWS」を掲載してその時々の「西なぎさ」のようすをお伝えしています。
こちらのページからバックナンバーも含めてご覧になれますので、ぜひご覧ください。
〔葛西臨海水族園調査係 小川悠介〕
(2021年08月27日)