ニュース
川のさかな? 海のさかな? 不思議なアユ
 └─葛西 2023/06/02
 現在、「東京の海」エリアの2階にある「葛西の海2」水槽では、葛西臨海水族園から徒歩10分の場所にある海、西なぎさで採集したアユを展示しています。「アユが水族園の近くで捕れた!」と聞くと、「川魚としてよく知られているアユがどうして海にいるの?」と思われる方もいるのではないでしょうか?


「葛西の海2」水槽で展示しているアユ

 アユは川で生まれたあとに海へくだり、成長すると川をのぼります。そして川で産卵し、その生涯を終えます。そのようなライフサイクルをもつ魚を「両側回遊魚りょうそくかいゆうぎょ」といい、アユはそのなかでも代表的な魚です。海で全長5~6cmほどに成長したアユは春先に河口付近に集まり、集団で川を遡上します。西なぎさの近くには大きな河川の河口があるため、遡上前に集まっていたのでしょう。

 現在展示しているアユは2023年4月に実施した地曳網調査で採集されたもので、河口付近でみられるアユとしては大きい全長10cmほどでした。水槽では、幼魚の特徴である銀色の体表にやや黒い背中を観察できますが、なかには成魚のように体表が黄色く色づき始めている個体もいます。


幼魚の特徴である銀色の体表

 水族園では定期的に西なぎさで地曳網調査を実施しており、例年2〜4月ごろにアユが採集されています。冬の時期のアユは身体が透明で、現在展示しているアユとはまた違うすがたをしています。過去の記事には写真もありますので、ぜひ見比べてみてください。(小さくて透明な幼魚少し大きくなった銀色の幼魚

 例年の調査から、西なぎさ沖はアユが河川を遡上するために集まってくる場所ではないかと考えられます。また、春先から夏にかけてはアユだけでなくエドハゼやビリンゴといったハゼの稚魚や、ボラやトラフグの幼魚も採集されており、西なぎさがたくさんの稚魚や幼魚の成長の場所として利用されているようです。

 今の時期しか見ることができない成魚へ成長途中のアユを、ぜひじっくり観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 加藤舞〕

◎関連ニュース
東京湾のアユを展示しています(2004年03月05日)
地先、「西なぎさ」での地曳網調査(2021年08月27日)

(2023年06月02日)



ページトップへ