先日、「世界の海」エリア「南シナ海」の水槽の展示種を変更しました。この水槽はタマカイやドクウツボなど、大型の魚をおもに展示しています。今回、新しく全長20センチほどの中型の魚を展示するため、ドクウツボ2尾とニセゴイシウツボ1尾の計3尾を一度水槽から取り出しました。この3尾は以前追加した魚を襲って食べていたと思われる個体です。新しく入った魚たちが隠れる場所などを見つけ、水槽に慣れるまで、ウツボたちは裏の水槽でお休みさせています。
さて、一言で「水槽から取り出す」と言っても、相手はいずれも全長 1.5メートルを超える大きなウツボたち。あごの力も強く、さらに鋭い歯をもっているので作業中に噛まれてしまったら大変です(と言ってもドクウツボの歯自体に毒はありません)。一方、飼育係としては移動の際に魚たちが傷ついてしまうようなことも避けなければなりません。
・関連記事「
毒をもつ生物(5)食べるな危険? ドクウツボ」(2010年8月20日)
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ドクウツボの口元に麻酔を漂わせる | 麻酔をかけてドクウツボを水槽から 取り出し、全長を測定 |
今回は、飼育係とウツボたちの安全のために、獣医師の指導のもと、麻酔を使って作業をおこないました。飼育係が水槽に潜り、あらかじめ注射器に入れて用意した麻酔薬をウツボの口元に漂わせ、少しずつ吸わせました。動きが鈍くなってきたところで鎮静剤を注射してからウツボを捕まえ、マグロを運ぶ際に使う大型の担架ですくい上げました。また、記録をとる貴重な機会なので、全長と体重を測定しました。3尾の中でいちばん大きかったのはドクウツボは、なんと全長159センチ、体重20キロもありました!
測定後は速やかに覚醒させるための薬を注射し、裏側の予備水槽へ収容しました。しばらくボーっとしていたウツボたちですが、しだいにそわそわと動き出し、飼育係もホッとしました。
その後、ウツボがいなくなった水槽にはナンヨウブダイ、アカマツカサ、ノコギリダイ、ヒメテングハギを新しく展示しています。ほかの魚に襲われて数が減るようなこともなく、えさも順調に食べ始めました。
しばらくウツボたちの姿をお見せできませんが、新しい顔ぶれの魚たちが水槽をにぎわせています。ぜひご来園ください。
※今回の麻酔方法については事前に名古屋港水族館からご協力をいただきました。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 石神まゆか〕
(2016年06月17日)