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毒をもつ生物(5)食べるな危険?ドクウツボ
 └─2010/08/20

 葛西臨海水族園の「南シナ海」水槽では、ウツボのなかまのドクウツボを2尾展示しています。このウツボは、黄色ががかった褐色に黒い点が散りばめられた不気味な体色をしています。細長い体をして胸びれが無く、背中からお腹にかけてのひれが1つにつながっています。このひれを細長い体ごとうねらせて泳ぎ、大きな口で他の生き物を襲って食べます。何だか陸上のヘビに似ていますね。

 ドクウツボは、ウツボの中でも大型で、最大で全長2メートル近くまで成長します。当園のドクウツボも全長 1.5メートルを超え、岩の間から大きな頭を出してまわりをうかがっているところを見ることができます。

 ウツボのなかまは歯が鋭く、かむ力が強いものばかりです。ドクウツボも体が大きいため、かむ力は非常に強力です。給餌のときは、魚やカニなどを大きなピンセットで挟み、水槽の上から渡すのですが、ピンセットにも噛みつくことがあり、そんなときは、ゴーリゴーリとかみつぶされるような不吉な感触が伝わってきます。もし人間も手などをかまれたら大けがをするのは間違いなさそうです。

 口がとても危険なのはたしかですが、「ドク」という名前にもかかわらず、毒の歯は持っていません。ではどうして「ドクウツボ」なのでしょうか?

 それは、筋肉中にシガトキシンという毒があるからです。このシガトキシンは、人間が摂取すると、寒気(温度感覚の異常)、吐き気や目まい、体の痛みや麻痺など、重度の中毒症状を引き起こす恐ろしい物質です。

 この毒成分は、食物連鎖の過程でウツボなどの海の生物の体内に蓄積され、それを人が食べて中毒を起こします。ドクウツボが必ずこの毒をもっているわけではないのですが、生息する環境によっては筋肉や内臓中にかなりの濃度で蓄積することがあり、厚生労働省のホームページでは猛毒に指定されています。

 ウツボのなかまは食べてみるとおいしいものが多く、ドクウツボも必ず毒を蓄積しているわけではないので、食用にしている場所もあるそうです。しかし、不慣れな人間が食べるにはとても危険な生き物のようです。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕

(2010年08月20日)



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