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続・新たな視点で見てみると(45)刺激的なくちづけ!?──スネークロックスアネモネ
 └─葛西  2014/01/17

 2013年暮れ、葛西臨海水族園は閉園中で大がかりな掃除のチャンスなので、水槽に潜って清掃をしていました。今回潜ったのは、世界の海エリアの「地中海」水槽です。この水槽にはスネークロックスアネモネという、触手を広げると20センチほどあるイソギンチャクのなかまを展示しています。このイソギンチャクはスペインなどでは天ぷらのように油で揚げて食べる地域もあるそうです。

「イソギンチャクを食べに行こう!」(2008年05月16日)

 水槽のアクリルガラスの清掃が終わったので、壁面の清掃に移る前にいったん水面に顔を出して、ダイビング用のマウスピースを口から外して水槽内に置いていました。そして、清掃を続けようとマウスピースを口にくわえた瞬間、まるで何かに噛みつかれたような鋭い痛みが唇に走りました。
 思わず「痛ってー!」と叫んでしまい、口から外したマウスピースを見てみると、スネークロックスアネモネの触手が1本ちぎれて貼り付いていました。

 イソギンチャクのなかまは、とても小さな毒針を隠した刺胞と呼ばれるカプセルを触手に無数にもっています。近づいてきた魚などにこの毒針を刺して麻痺させて食べているのです。今回は自分の唇が、この毒針の犠牲になりました。

【触手から発射される無数の刺糸(毒針)の動画(1分)】
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 自分は地中海で実際にこのイソギンチャクを採集したことがあり、そのときに「わりと毒の強いイソギンチャクだから気を付けて」と言われていました。採集時も飼育している間も刺されたことはなかったのですが、明日は大晦日という年の瀬になって油断してしまいました。

 何とか清掃を終わらせ水槽から上がりましたが、時間が経つにつれてだんだんと唇が腫れてきて、触手が触れた部分は水ぶくれになってしまいました。2週間ほど経ってようやく治ってきましたが、正月はおせち料理を食べるのに大変苦労しました。

写真上:「地中海」水槽。右下にスネークロックスアネモネが10個体ほど寄り集まっている
写真中:触手から発射された無数の刺糸(毒針)
写真下:取り出した刺胞。2つは刺糸を発射している

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2014年01月17日)



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