多摩動物公園昆虫園のマレーシア産昆虫「サカダチコノハナナフシ」は、成虫がいなくなり卵を残すのみになったため、2012年2月から展示を休止していましたが、今回新たな個体を導入して6月28日から展示を復活しました。
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「昆虫園の巨大生物シリーズ、その2『サカダチコノハナナフシ』」(2012年01月20日)
前回は成虫のみの展示でしたが、ようやく幼虫も孵化したため、7月19日から卵と幼虫も展示しています。 体長が15センチ以上もある成虫に比べると、卵と幼虫は非常に小さく、とくに驚きはないかもしれませんが、それでも日本の昆虫とは比べ物にならない大きさです。
日本に生息している最大のナナフシ「オキナワナナフシ」(本館1階ふれあいコーナーで展示中)の幼虫と比べると、その大きさの違いがよく分かるのではないかと思います。
成虫は、日本にいるようなおとなしいナナフシとはまるで違い、飼育担当者の手が体に触れようものならすぐ暴れだし、擬態をする気があるのか疑わしいほど気性の荒い昆虫ですが、幼虫たちは打って変わっておとなしく、何かがあった場合は、すぐ死んだふり(擬死)をします。姿形は成虫とほぼ同じですが、体色は茶色を基調としているため、床に転がる姿はまるで地面に落ちている小枝のよう。
卵の形は、日本のナナフシとほとんど変わりませんが、大きさが長径9ミリ短径5ミリほどで、やはり日本の昆虫の卵とは大きな差があります。南の一年中暖かい環境にいるため、卵も冬の休眠等をはさまないですぐ孵化しそうな印象がありますが、実際には産卵から孵化まで非常に時間がかかります。昆虫園では2011年11月から2012年2月までに産んだ卵が7月になってようやく孵化を始めたので、だいたい4〜8か月近くかかっていることになります。
サカダチコノハナナフシは、いろいろな植物を食べる「広食性」の昆虫なので、草から樹木の葉までさまざまなものを餌にしています。現在展示している成虫と幼虫たちには、主にミカンや小松菜、マテバシイなどを与えています。幼虫は少食ですが成虫は大食漢なので、時間によっては葉をバリバリと食べているシーンに遭遇できるかもしれません。これから数か月かけて幼虫は少しずつ成長していきます。いつごろ成虫と同じ緑色になるのか、合わせて観察を楽しんでいただければと思います。
写真上:卵と幼虫
写真下:死んだふりの幼虫
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕
(2012年07月20日)