以前の
記事(2012年3月23日)でイソギンチャクに隠れないカクレクマノミについてお知らせしました。
が、ようやく隠れるようになりました! 今回は続報として、これまでの経緯をお送りします。登場する生物は、葛西臨海水族園で展示しているカクレクマノミのペアA、Bと、予備水槽で飼育しているカクレクマノミC、そしてイボハタゴイソギンチャク(以下イボハタゴ)とハタゴイソギンチャク(以下ハタゴ)の5個体です。
イボハタゴには隠れない……ということで、まずはイソギンチャクの種類を変えてみることにしました。イソギンチャクの毒は種類によって違いがあり、その毒とクマノミ類の体には相性があります。カクレクマノミが入りやすいとされているハタゴを入手し、予備水槽でカクレクマノミCと同居させてみました。すぐに入ったので、展示のイボハタゴと交換しましたが、カクレクマノミAとBは一向にハタゴに入ろうとしませんでした。
展示水槽から予備水槽に移したイボハタゴにカクレクマノミCはあっさりと入りました。1尾にすると隠れるのでは?という予測のもと、展示の個体をAのみにしましたが、この作戦も失敗です。
しかし、展示から取り出したBも予備水槽ではイボハタゴにしっかりと入っています。ここで考えられるのは、すでにイソギンチャクにカクレクマノミが入っていると、後から入れた個体もつられて入るのでは?ということでした。
そこでハタゴにもイボハタゴにもすんなりと入った予備水槽のCと、展示のAを入れ替えてみました。すると、ついに!カクレクマノミAが隠れました! スタッフ一同大喜びです。数日後、予備水槽のBを展示に戻し、現在2尾がイソギンチャクに隠れる姿を見ることができます。
以上の経緯から、一般的にいわれているイソギンチャクとクマノミの種類としての相性だけではなく、個体による「入りやすさ」の違いや水槽の環境などにも左右されるのではないかと思われます。
ふつうカクレクマノミは、何もせずともイソギンチャクに隠れる生き物ですが、今回は隠れないカクレクマノミを隠れさせるために、試行錯誤の連続でした。苦労はしましたが、これも飼育係の楽しみのひとつとでもあります。
写真:カクレクマノミとハタゴイソギンチャク
〔葛西臨海水族園飼育展示係 細谷有莉沙〕
(2012年05月04日)