みなさんお久しぶりです。今回は「かいこう7000 II」が深海で出会った面白い生き物を御紹介しましょう。
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「こみすけの深海調査航海見聞録、その弐」
その生き物とは、前回にも少し登場したサンキャクウオです。サンキャクウオは種名ではなくイトヒキイワシ属というグループに分類される魚たちの総称です。
水深1000メートルの海底を調査中、「かいこう7000 II」の目の前にサンキャクウオが現れました。左右の腹びれと尾びれの下の部分で海底に立っているその姿は、深海のようすを撮影している三脚付きのテレビカメラのように見えます。
近づいて良く見ると、胸のあたりからワイヤーのようなものが出ています。これは胸びれが変化したもので、途中で二つに分かれていて、アンテナのような働きをします。潮が流れて来る方向に向かって立ち、このアンテナを広げて、流れに乗って運ばれてきた小型の甲殻類などの餌が起こす振動や水流の乱れを感知しているといわれています。サンキャクウオの姿をテレビカメラみたいだと書きましたが、パラボラアンテナといった方が合っているかもしれません。
サンキャクウオのなかまには、三脚の部分が長いものや、アンテナの本数が多いものなどさまざまな種類がいます。また、このアンテナを動かして餌を引き寄せているともいわれていますが、詳しい生態はまだ分かっていません。
しばらくの間、「かいこう7000 II」から送られてくる映像に見入っていましたが、やがてサンキャクウオは泳ぎだし、深海の闇の中に吸い込まれていきました。
3回に渡ってお伝えした「こみすけの深海調査航海見聞録」はこれにて終了とさせていただきます。お読みいただいたみなさんに感謝いたします。
写真:海底に立つサンキャクウオ
【写真提供:独立行政法人海洋研究機構(JAMSTEC)】
〔葛西臨海水族園調査係 小味亮介〕
(2012年02月17日)