「コン、コン、コン」──ステンレス製のハンマーと石の台座を使って、硬いマカダミアナッツの殻を割ろうとしている多摩動物公園のチンパンジーは、3歳5か月のジンです。ナッツが飛んでいかないように片方の手でガードして、真剣な表情でハンマーを振り下ろしています。なかなか割れなくても、集中して続けています。そして「コン、コン、カシャン!」。ナッツの割れる小気味よい音が運動場に響きました。ジンは割れた硬い殻の中からおいしい実を取り出し、味わって食べています。
以前ジンがナッツ割りに挑戦していることはお伝えしましたが、先日とうとう成功しました。
・
「チンパンジーのジン、ナッツ割りに挑戦中」(2011年05月27日)
ジンが初めてナッツ割りに成功するのを確認したのは、2011年12月20日のことです。まっすぐハンマーを当てることができないので、どうしてもナッツを彼方に飛ばしてしまうのですが、それでもジンは諦めません。飛んだナッツを拾ってきては何度も何度もハンマーを振り下ろしました。そのうちナッツを後ろ脚でおさえるようになり……とうとう、ジンはナッツを割ることができたのです!
一度ナッツ割りに成功したジンは、すっかりコツをつかんだようです。もちろんほかのチンパンジーと比べると時間はかかりますが、ナッツを押さえる方法を変えたり、ハンマーの持ち手を変えたりと、自分なりにくふうをしています。ぎこちなかった手つきも見る間に上達し、その姿は自信に満ちているように感じます。ナッツ割りに挑戦中のジンは、正に真剣そのもの。諦めずに挑戦し続けたジンの粘り強さと集中力に、思わず「私も見習わなくっちゃ!」と思ってしまいます。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 東川上純〕
(2012年01月06日)