2009年4月22日から約2か月間、上野動物園子ども動物園の木曽馬「幸泉号」(さちいずみごう)が、生まれ故郷である長野県の「木曽馬の里」に里帰りしていました。繁殖を目指した移動です。
・ニュース「
木曽馬の「幸泉号」、長野に約1か月移動」
ひさびさの里帰りだったため、「他のウマとうまくやっているかな?」「元気でやっているかな?」と心配していましたが、近況報告として送られてきた写真には、元気よくなかまたちと放牧地を走り回っているすがたが写っていました(写真上)。どうやらいらぬ心配だったようです。
そして繁殖にも成功! 6月中旬、妊娠鑑定をおこなった結果、妊娠が判明しました。その際、胎児の心音まで聞こえたそうです。晴れてお母さんになった幸泉号は6月24日、上野動物園に帰ってきました。
ひさしぶりの動物園の風景や匂いに戸惑い、「馬運車」(ばうんしゃ=ウマを輸送する車)から降りるのをためらっていた幸泉でしたが(写真中)、しばらくすると動き始め、車から降りて歩き出し、以前と同じ寝室に入りました。
初めのうちは心細いのか、人が通るたびにこちらを見ては大きくいななき、落ち着かないようすです。夕方、大の仲好しだった野間馬の「えりか」が隣の部屋に戻ってくると、幸泉号も安心してえさを食べ始めました。健康診断で異状がないことも確認され、6月30日以降、在来馬の運動場で幸泉号、えりか、そしてトカラ馬の「琥太郎」の3頭をいっしょに展示しています。
2か月ぶりに再会したウマたちですが、おぼえているものですね。あいかわらず野間馬のえりかは幸泉号にべったりで、いつも幸泉号について歩きます。トカラ馬の琥太郎は幸泉号によく怒られています。幸泉号が里帰りしているあいだは琥太郎の天下だったのですが、やはり幸泉号にはかなわないようで、わが物顔だった琥太郎も小さくなっています。なんだか、なつかしい風景に一安心しました。
余談ですが、動物園に戻ってきて体重を測ったところ、なんと13キログラムもやせていました。広い放牧場でなかまたちと走り回ったのがよかったのでしょうか……。少し太り気味の幸泉号にはいいダイエットになったようです。
順調にいけば来春には木曽馬幸泉号の仔馬が誕生すると思います。母となった幸泉号、そして、えりかと琥太郎──在来馬3頭のほほえましいすがたを子ども動物園でごらんください。
写真上:木曽馬の里で活き活きと走る幸泉号
(「木曽馬の里」中川剛さん撮影)
写真中:馬運車から降りるのをためらっています
写真下:落ち着いたようすの幸泉号
〔上野動物園子ども動物園係 橋川真弓〕
(2009年07月03日)