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「東京でカエルを見かけたヨ!」目撃情報集計
 └─上野・多摩・葛西・井の頭・ 2008/12/26

 2008年2月29日から11月6日まで、国際カエル年のイベントとして「東京でカエルを見かけたヨ!」を開催しました。上野動物園、多摩動物公園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園の4園合同のイベントです。

 これは、直近2週間以内に都内で目撃したカエルについて、種類に応じた色のシールを白地図に貼っていただくという調査です。黄色がヒキガエル、緑色はアマガエルやアオガエル類、赤色はアカガエル類(ヤマアカガエル、トウキョウダルマガエル等)、白色は種類がわからない場合、そして青色はオタマジャクシです。白地図は2週間ごとに新しいものに交換しました。

 2月以降、たくさんの方に目撃情報をお寄せいただき、終了後に集計したところ、シールの数は4園合わせて36,865! 内訳は、上野5,119、多摩4,210、葛西20,970、井の頭6,566でした。ご協力ありがとうございました。

 5月には中間報告を行ないました(報告ページはこちら)。

 11月6日終了後の結果を簡単にご紹介しましょう。地図は区市街村に分かれています。目撃情報がいちばん多く寄せられたのは、江戸川区の 2,680件。しかし、だからといって江戸川区にカエルがいちばん多く生息しているとはかぎりません。なぜなら、江戸川区には葛西臨海水族園があるため、地元の江戸川区民の方が葛西臨海水族園に情報をお寄せくださった可能性があります。また、上野、多摩、葛西、井の頭の4園のうち、葛西に寄せられた情報は、全体の半分を超える20,970件でした。

 一方、4園のいずれからも離れているにもかかわらず、どの園でも比較的多数の情報をいただいた地域は、世田谷区(1,815件)と杉並区(1,593件)でした。西の地域では、八王子市(1,243件)での目撃情報が多くありました。

 カエルの種類の内訳は多い順に、ヒキガエル11,642、オタマジャクシ9,022、種類不明6,655、アマガエルやアオガエル類6,251、アカガエル類3,295でした。

 トップのヒキガエルは、正確には「アズマヒキガエル」。都会の公園や人家の庭先でもくらすことができるアズマヒキガエルは、東京でくらす私たちにとって、もっとも身近なカエルだということがわかります。

 次に多かった「オタマジャクシ」ですが、その多くはやはりアズマヒキガエルでしょう。アズマヒキガルの産卵時期は2月中旬から3月中旬。オタマジャクシの目撃情報がいちばん多く寄せられたのは4月上旬だったので、公園の池などでオタマジャクシが孵化し、目撃される時期と重なります。

 興味深いのは、6,251件と目撃情報が多かった緑色のカエルでした。そこにはシュレーゲルアオガエルやモリアオガエルも含まれていると思いますが、たぶんいちばん多かったのはニホンアマガエルでしょう。黄緑色をした小さなニホンアマガエルは、いまや日本中でもっともふつうに見られるカエルです。田んぼが乾田化(トラクターで耕しやすいよう、冬に田を乾燥させること)や、水路・小川のコンクリート化といった環境の変化にともない、日本のカエルの多くが数を減らしています。しかし、ニホンアマガエルだけは全国各都道府県のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)のどこにも載っていません。最近は、都内の人家の庭先での目撃例も寄せられています。カエルマップから、カエルが置かれている現状も見えてきます。

 カエルは昆虫をたくさん食べたり、鳥やヘビなどに食べられたり、自然の生態系の中で重要な役割を果たしています。その一方で、現在、世界で多くのカエル類が絶滅の危機に瀕しています。

 このことを世界中の多くの人に知っていただくために、今年は世界中の動物園や水族館が協力して国際カエル年のキャンペーンをおこないました。「東京でカエルを見かけたヨ!」もそのひとつです。都内にもまだカエルがすんでいる、ということを実感していただきたこうと考え、調査を実施しました。実際は、報告を受けた施設の立地、季節による来園者の動向など、さまざまな要因が影響しますので、今回の調査結果が単純に都内のカエル生息状況を反映しているわけではありません。

 「東京でカエルを見かけたヨ!」は終了しましたが、カエルを守る取り組みはまだ始まったばかりです。

写真上:ヒキガエル
写真下:目撃情報報告用の地図

〔多摩動物公園野生生物保護センター長 冨田恭正〕

(2008年12月26日)



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