葛西臨海水族園では、水族園周辺にすむ生き物の調査をおこなっています。
先日、東なぎさで調査をおこなったときのことです。潮が引いてできた干潟の上を歩いていると、なにか小さな白い物が落ちていました。近づいてよく見ると、エビやカニのはさみ脚のようでした。まわりを見てみると、近くにもう一つ同じはさみ脚が落ちています。しかし、これは先ほど見つけたのと同じ右の脚で、別の個体のもののようです。しかも、落ちているのははさみ脚だけで、他の脚や胴体の部分はかけらもありません。
不思議に思い、ほかにも落ちていないか探してみました。10分ほど干潟を歩きまわって、5本のはさみ脚が集まりましたが、やはり他の脚は落ちていません(写真上)。
そして、ようやく、この脚の持ち主を見つけました。「ニホンスナモグリ」です。ニホンスナモグリは内湾性の干潟にすみ、砂泥に穴を掘って、その中に含まれる有機物を食べてくらしています。体長4~7センチほどの白っぽい体をして、左右どちらかだけ大きなハサミを持っているのが特徴です。
脚の落とし主は分かりました。しかし、大きい方のはさみ脚だけが干潟に残っている謎は、まだ解けていません。
この東なぎさは、生き物たちの生活場所を守るため、ふだんは立ち入り禁止です。そのため、干潟を食事場所にしているシギやサギ、カモメなど、多くの鳥が集まっています。その鳥たちが食べたあとなのでしょうか? それとも、以前このメルマガでも紹介したことのある「アカエイ」がスナモグリを掘り出して食べて、はさみ脚だけ残したのでしょうか?(アカエイの食事については
バックナンバー No.131「この穴、なんの穴……?」をごらんください。)はたまた、ただ単に脱皮した殻で、たまたまはさみ脚だけ干潟に残るのでしょうか?
じつは、私もスナモグリの脱皮や捕食されるシーンを見たことがないので、本当のところはわかりません。
自然界にはまだまだわからないことがたくさんあります。これから潮干狩りシーズンですが、みなさんも砂の中のアサリを掘りながら、まわりに落ちている不思議を探してみてはいかがでしょうか。
〔葛西臨海水族園調査係 三森亮介〕