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飼育係とゴリラの知恵比べ(後編)
 └─ 2023/01/16
〇 知恵比べ開始!
 前編で、あっさり攻略された塩ビフィーダー初号機。完全に私の見誤りであり、敗北でした。なんとかして蓋の破壊を防ごうと、知恵を絞ります。

 いろいろなアイデアが浮かんだ末、「蓋が塩ビ管の口にすっぽり収まれば、壊されることはないだろう!」という考えに至りました。そこで、厚めの木材で蓋を作り、すっぽりと塩ビ管の口にはめ込みました。念には念を入れて側面からビスを打ち込み、頑丈に留めておきます。

 破壊された初号機からの改良を受けた二号機を前に、「これで壊されることはないだろう」と心のなかでニヤつきました。

木材で制作した蓋
蓋をはめ込んだパズルフィーダー

〇 2度目の敗北
 これで完全勝利だとタカをくくり、挑んだ2回戦。勝負はあっという間につきました。またしてもロープから外されたフィーダーは、端を打ち付けられた挙句、2つに粉砕されていました。


再びゴリラに壊されたパズルフィーダー

 なんという力と頭のよさでしょう。すっかり感心しつつも、苦い気持ちが湧いてきます。

 しかし、蓋が壊されたわけではありません。ロープで吊るしていない短いものも破壊されていません。ということは、長いものはロープから外せないようにすればいいのです。そして、ラウンド3に挑むのでした。

〇 勝利へ
 ロープで吊るした塩ビ管は、ゴリラが力技で引き抜いていることがわかりました。そこで、どうすれば良いものかと先輩にもアドバイスをもらいます。

 「ロープを編み込めばいいんじゃないか」というお言葉をいただき、やり方を教わります。編み込みによって、まずはゴリラの怪力によるロープのほどけがないようにします。さらに、ロープの先に金属の輪をつけ、完全に外れないようにします。

 これで完璧! と心に言い聞かせ、いざ、勝負です。

編み込みロープと金属の輪を取り付けたフィーダー
編み込みロープと金属の輪(拡大写真)

 期待と不安が入り混じるなか、展示場にフィーダーを準備し、ゴリラたちを放飼します。

 しばらくようすを見ていると、ゴリラたちがフィーダーを振ってえさを食べ始めます。すると、やはり吊るしてある長いフィーダーを引っ張り、ロープから引き抜こうとします。

 ものすごい力で引っ張るので、「やばいかな……」と不安になりつつ見守りましたが、引けども引けども抜けることはありません。しかも、途中で諦めて、こちらの狙いどおりにフィーダーを振ってえさを取っているではありませんか! そして、何日試しても、毎回無事に帰ってくる三号機たち。これは、飼育係の勝利と言ってよいでしょう。


【動画】パズルフィーダーを使うゴリラ

 いまのところ、ゴリラたちは三号機を使い時間をかけてえさを食べてくれています。ひとまずは、パズルフィーダーとしての目的を果たしているのではないでしょうか。

 しかし今後、ゴリラたちが新しい方法で三号機を攻略する日が来るかもしれません。そのときはまた、頭をひねりながら新しいアイデアを出し、ゴリラたちに挑むのです。もちろん、これから別のフィーダーも考えていくつもりです。

 飼育係の挑戦は、まだまだ続きます。

〔上野動物園東園飼育展示係〕

(2023年01月16日)



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