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日本産ライチョウの保護活動について紹介します!──上野動物園と富山県の取組み(1)
 └─ 2022/02/16
 日本アルプスの高山地帯に生息するニホンライチョウ(Lagopus muta japonica)は、世界各地の寒冷地に広く生息するライチョウ(L. muta)のなかでもっとも南に生息する亜種です。

 ニホンライチョウ(以下「ライチョウ」)は、1980年代には約3,000羽が生息していましたが、2000年代には約1,700羽まで減少しています。減少した要因として、地球温暖化による高山環境の変化、シカやイノシシ、ニホンザルなど里山に生息する動物たちの高山帯への進出などが懸念されており、環境省の公表するレッドリストでも2012年に絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)から絶滅危惧IB類(近い将来、野生での絶滅の危険性が高い種)にランクが上がっています。

 そのため、環境省は2014年からライチョウを保護増殖事業種として、生息域の内外での保全活動をおこなっています。上野動物園も2015年から当該事業に参画し、2019年3月から東園「日本の鳥Ⅰ」にてライチョウを公開しています。

 2021年6月には、5年ぶりとなる北アルプスの立山地域のライチョウの生息数調査が富山県により実施されました。その調査結果について、富山県のご協力により紹介させていただくとともに、当園におけるライチョウ保全の取組みについても合わせて紹介いたします。2回に分けて掲載しますので、ぜひご覧ください。

1.ライチョウの生息数調査について──富山県の取組み

 ライチョウの国内最大の生息地である北アルプスの立山地域を有する富山県では、ライチョウの生息状況を把握し、今後の保護対策を計画する資料とするため、昭和47年(1972年)から生息・生態調査を実施しています。

 今回は2021年6月10日から16日の7日間、室堂平を中心とした1,070haを21名、のべ101名の調査員が調査しました。

 調査員が実際に目視で確認する「踏査(とうさ)」という方法の調査により、個体や生息痕跡の確認のほか、ナワバリの数や位置も確認します。山のなかをひたすら歩きまわる地道な方法で、ライチョウの調査はおこなわれているのです。


生息数調査のようす
(写真提供:富山県)

調査結果
 現地で視認されたライチョウ(成鳥)の生息数は205羽(オス163羽、メス42羽)でした。また、ライチョウと、ライチョウの繁殖期特有の生活痕跡(ナワバリ)の観察から、ナワバリは141か所の存在が推定され、ナワバリにはオス141羽とメス143羽が生息すると考えられています。ここに、ナワバリを形成していないオス40羽を加え、調査地域内には少なくとも324羽の成鳥が生息していると推定されました。

 これは、2016年度の調査で確認された295羽に比べ10%増となり、また、ナワバリの数は調査開始以来もっとも多い記録となりました。ただし、野生動物は一般に個体数の増減を繰り返しており、今回の結果もライチョウという種が本来もっている増減の範囲内であると考えられています。まだまだ個体数が増加していると安心できるわけではなさそうです。

 次回は上野動物園の取組みについてご紹介いたします。こちらの記事をご覧ください。

◎参考
ライチョウ生息数調査の実施について(富山県HP内)
立山地域におけるライチョウ生息数調査の結果(R3)(富山県HP内)

(2022年02月16日)
(2022年02月20日:次回記事について追記)



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