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2021年9月24日は「世界ゴリラの日」です
 └─ 2021/09/24(09/27更新)
 9月24日は「世界ゴリラの日」です。

 世界ゴリラの日は、2017年にダイアン・フォッシー・国際ゴリラ財団により制定されました。絶滅の危機にある野生のゴリラの保護と、彼らの生息地である森林などの自然を守ることを目的としています。

1.群れのなかで育つゴリラ

 ゴリラはふつう、「シルバーバック」と呼ばれる成獣のオスと血縁のない複数のメス、その子どもたちからなる群れで生活します。

 上野動物園のゴリラの群れは、シルバーバックのオスである「ハオコ」、成獣のメスである「トト」と「モモコ」、そしてハオコとモモコの間に生まれた「コモモ」(2009年生まれ)、「モモカ」(2013年生まれ)、「リキ」(2017年生まれ)の6頭です。

 コモモは群れとは別の部屋で生まれ、約5ヶ月後に群れに合流しましたが、モモカとリキは初めから群れのなかで、他のゴリラたちに見守られながら生まれました。群れでの出産のようすはこちらのページをご覧ください。

 リキの誕生や成長を通し、ゴリラの子どもたちがどのようなことを学習していったのか、9月24日から27日まで、4日間かけて過去を振り返りながらご紹介します。


群れのなかでの出産のようす
(撮影日:2017年10月9日)

2.コモモとリキ

 ハオコとモモコのあいだの第1子であるコモモは、モモコがリキに対しておこなうグルーミングや排泄刺激、授乳などの育児のようすを間近でじっくりと観察していました。

 すでに、第2子であるモモカが生まれたときに経験していたため、リキの抱き方や接し方がうまく、私自身見守っていて安心できたのを覚えています。

 リキへ「背中にしがみつかせる」練習もおこなっており、背中にリキを乗せるようになってからも、うまくしがみつけないリキに歩行のペースや動き出すタイミングを合わせるようすが見られました。


背中でリキが安定するのを待つ「コモモ」
(撮影日:2018年12月30日)

3.モモカとリキ
 一方、モモカは育児のようすよりもリキ自身に興味津々。「さわりたくてしかたがない」というようすでした。

 自分よりも体が小さく力の弱い子どもと接するのは初めてだったため、はじめはリキの扱いが荒く、とてもハラハラしました。リキを背に乗せくるくる回り……柱に「ゴン!」といい音を響かせる……擬木や部屋の高い場所でリキの前肢を持ってブランコ……ドキドキハラハラしていたのは私だけではなく、群れのゴリラたちも同じだったようです。そのようなときはたいてい、モモカの近くにコモモが行き、そっとリキを回収……モモコの元へと戻すことが続きました。

 そんなモモカもしだいに力加減や接し方を学習し、今ではリキのいい遊び相手です。


モモカ、リキを抱く(このあと背に乗せようとしてリキに嫌がられました)
(撮影日:2018年12月30日)

4.リキとシルバーバック「ハオコ」
 リキ自身も、群れでの日々の生活や遊びのなかでさまざまなことを学習しています。

 ゴリラは鳴き声や表情、行動、しぐさなど、多彩なコミュニケーション方法をとります。他のゴリラたちと触れ合うことで、ゴリラとしてのコミュニケーション能力を高めていきます。シルバーバックは群れを誘導するだけではなく、群れ内でおきたトラブルもうまく調停しなければなりません。また、よいシルバーバックは子どもたちの面倒もよく見ます。

 リキも、体格の近い子どもたちだけではなく、体重200kgを超えるハオコともよく遊びます。そんなシルバーバックであるハオコの姿を見て、そして、ときには怒られながら群れのルールやシルバーバックの役割も学習していきます。


リキを見守るハオコ
(撮影日:2018年7月4日)

5.野生ゴリラの状況
 ゴリラは絶滅の危機に瀕しており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠA類(CR)」に分類されます。生息数が減少している主な原因は、森林の伐採などによる環境破壊や密猟、内戦、感染症です。

 なぜ密猟をするのでしょうか? それは、ゴリラはブッシュミート(食用の野生動物の肉)になるからです。戦争が起きれば、戦火に巻き込まれて直接的にゴリラが命を落とすだけではなく、戦争で物資の流通が滞り生活に困った人が、密猟に手を出してしまうこともあるかもしれません。なお、ウガンダの国内法では、絶滅危惧種の殺害で有罪となれば、終身刑または540万ドル(約5億8000万円)の罰金刑を課されます。

 また、ヒトとゴリラは遺伝的に近縁であり、同じ病原体に感染しやすいと言われています。実際に野生のゴリラへの大量感染やそれに伴う大量死については、いくつか報告されています。1988年には麻疹と思われる呼吸器疾患が確認され、1996年には疥癬が流行しました。2000年代前半にはエボラ出血熱が大流行し、ニシゴリラの一亜種であるニシローランドゴリラは、全体数のうちの3分の1が死んだ可能性があるとも言われています。

 このように、ゴリラが絶滅の危機に瀕している原因には、私たち人間が大きく関わっています。

6.私たちに何ができるのか?
 森林の伐採や鉱山の採掘などの環境破壊は、ゴリラだけではなくさまざまな生き物の絶滅や激減に直結します。

 環境破壊を食い止めるために必要なのは、私たち日本人の「もったいない」精神です! 2005年以降よく耳にする「MOTTAINAI(もったいない)」に代表される「3R運動」や「4R運動」は、私たち個人ができるもっとも身近なことです。

 Refuse:不要なものは断る Reduce:ゴミを減らす Reuse:再利用する Recycle:再資源化する

 これらの運動に取り組むことにより、さまざまな製品の製造に用いられる鉱物などの資源の使用を減らし、製造エネルギーに使われる樹木を減らし、森林伐採を減らすことができます。こうした意識を私たち一人ひとりが持つことで、結果的には絶滅する生物や絶滅危惧種を守ることができるのです。

 ぜひみなさんも9月24日「世界ゴリラの日」をきっかけに、まずは身近なことからアクションを起こしてみませんか?


ゴリラの未来を信じて
(撮影日:2018年12月30日)

〔東園飼育展示係 田村〕

(2021年09月24日)
(2021年09月25日:「3.モモカとリキ」追記)
(2021年09月26日:「4.リキとシルバーバック『ハオコ』」追記)
(2021年09月27日:「5.野生ゴリラの状況」「6.私たちに何ができるのか?」追記)



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