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【環境省事業】小笠原世界遺産センターで繁殖した小笠原陸産貝類が野生生息地に移されます
 └─2020/11/20
 環境省はこのたび、小笠原の希少陸産貝類であるチチジマカタマイマイとアナカタマイマイの野生個体群を再生させるために、小笠原世界遺産センターで飼育していた個体を生息地の一つである父島属島の巽島(たつみじま)に移す計画を2020年11月19日に発表しました(環境省記事)。飼育下で繁殖した陸産貝類を野生の生息地に移殖することは、環境省事業では初めての試みです。

アナカタマイマイの成体
恒温器での飼育管理。域外保全の一環です

 上記発表のとおり、国は小笠原産希少陸産貝類の保全を推進しています。公益財団法人東京動物園協会は環境省の協力要請を受け、環境省が進める「小笠原陸産貝類14種保護増殖事業計画」に協力し、2017年以降、都立動物園・水族園(上野動物園、多摩動物公園、井の頭自然文化園、葛西臨海水族園)では、絶滅が危惧されている小笠原諸島固有の陸産貝類のうち、カタマイマイとアナカタマイマイの飼育と繁殖に取り組んでいます。目的は希少種の危険分散や系統保存、普及啓発などです。2018年にはアナカタマイマイの繁殖に成功しました(お知らせ)。

 現在、都立動物園・水族園では小笠原陸産貝類の個体群再生を目的として、遺伝的多様性を考慮した繁殖計画を進めています。また、科学的知見を蓄積するために、試験個体を環境省に提供しています。今後、小笠原陸産貝類の普及啓発活動も各園で積極的に進めていきます。


普及啓発活動として実施してた小笠原産貝類についての園内トーク(井の頭自然文化園)


チチジマカタマイマイ Mandarina chichijimana[絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)]

分布域:小笠原諸島父島の南端部および巽島

生息環境:おもにオガサワラビロウ等が多い湿性林の林床に生息する。

特徴:殻長20.0mm、殻径24.0mm程度。殻はやや円く硬質。螺塔は高く、螺層はやや膨れる。体層周縁は丸い。殻表はほぼ平滑。殻色は淡黄褐色で、殻に4本の色帯をもつ。臍孔は閉じる。殻口は厚く肥厚・反転する。


アナカタマイマイ Mandarina hirasei[絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)]

分布域:小笠原諸島父島の南端部および巽島。母島北部

生息環境:タコノキやオガサワラビロウが生育する林内の樹上から地上までを利用する。

特徴:殻長13.0mm、殻径21.0mm程度。殻は偏平、やや薄質、螺層はわずかに膨れる。体層周縁は丸い。殻色は淡黄褐色から濃褐色で、色帯をもたない。殻表はほぼ平滑。殻表の光沢は弱い。臍孔は広く開く。殻口は厚く肥厚・反転する。


カタマイマイ Mandarina mandarina[絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)]

分布域:小笠原諸島父島の北端と東部、および兄島の北部を除く地域に分布する。

生息環境:オガサワラビロウ等の樹種が豊富に生育する湿性林の林床に多い。

特徴:殻長21.0mm、殻径28.0mm程度。殻はやや丸く、やや硬質。螺塔は低く、螺層はわずかに膨れる。体層周縁は丸い。殻に濃紫褐色2本の幅広い色帯をもち、むしろ体層周縁に殻色の淡黄褐色の色帯を持つように見える。殻表はほぼ平滑。臍孔は閉じる。


(2020年11月20日)



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