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ライチョウのひな、順調に育っています
 └─2016/12/16

 日本の本州中部、南北アルプスの高山帯に生息するライチョウは、北半球に広く分布するライチョウの中で最南端に生息しています。近年、その生息数の減少が心配されており、環境省と公益財団法人日本動物園水族館協会はライチョウの保護増殖事業に取り組んでいます。上野動物園でも2015年からライチョウの飼育を始めました。

2015年、初めての取り組み

 2015年6月、長野県・岐阜県県境にある乗鞍岳で採集した5卵を上野動物園へ持ち帰り、孵卵器で約21日間温めました。卵は無事に孵化し、順調に育っていましたが、残念ながら生後59~71日齢で全個体が死亡しました。飼育管理に問題はなかったか等、私たちは原因究明のために動物病院係や大学、検査機関等と協力して検証をおこないました。

・2015年のライチョウ飼育経過(こちらのニュースから過去の関連ニュースをご覧ください)

2016年、飼育方法の変更

 前年度は別亜種スバールバルライチョウの飼育方法を基本に進めましたが、その結果をふまえ、2016年は成育過程における飼育方法を一部変更しました。


ひなNo.1とNo.4。孵化翌日、2016年6月27日)

 第1点は衛生面です。昨年度はスバールバルライチョウの飼育部屋の一室を使って、日本産ライチョウ用を飼育していましたが、衛生管理を徹底するため、これまでスバールバルライチョウを飼育展示していた「日本の鳥I」のスペースを改修し、ライチョウ専用の飼育施設を作りました。


ひなNo.1、5日齢、2016年7月1日)

 第2点は飼料の改善です。ライチョウは野生ではタデ科の植物を多く食べます。上野動物園で以前から飼育していたスバールバルライチョウでも、スイバやギシギシといったタデ科植物をひなが小さい時期に与えることが感染予防のために推奨されています。しかし、タデ科植物を与える量や期間が骨髄の形成に影響を与える可能性もあるため、今年はえさの量を制限して早めに小松菜に切り替えるとともに、富山市ファミリーパークで与えていたビルベリーの葉も用いることにしました。

現在(2016年12月)のようす

 今年孵化した個体は、現時点で4羽すべてが順調に育っています。成鳥と比べてもほとんど変わらない姿になってきました。ライチョウは年に3回換羽をする種として知られています。高山の風景の季節変化に合わせて羽毛が抜け変わり、保護色となるのです。夏、ひなはハイマツや土の色に溶け込むように茶色い体で生まれ、冬になると山一面の雪景色に溶け込む白い羽毛に変わります。


ひなNo.4、163日齢、2016年12月6日)

 飼育施設で雪を降らすことはできませんが、照明と温度を乗鞍岳の日照時間と気温に近づけると、ひなは徐々に白い羽に抜け替わってきました。茶色い羽毛は残り数枚です。

 上野動物園におけるライチョウの域外保全は最初の一歩を踏み出し始めました。まずはライチョウの飼育方法を確立させることが私たちの第一の目標です。現在、ライチョウは非公開ですが、今後もひなの成長を応援していただけましたら幸いです。

〔上野動物園東園飼育展示係 高橋幸裕・吉村映里〕

(2016年12月16日)


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