上野動物園では、ジャイアントパンダ「シンシン」に妊娠の徴候が見られたため、2013年6月4日からの展示を中止していました(
こちらのニュース)が、健康管理のため、7月2日(火)から屋内外展示場と産室及び寝室を開放して出入りを自由にする形で、展示を再開することになりました。
展示中止から今日まであたたかく見守っていただき感謝いたします。元気なシンシンにぜひ会いに来てください。
1.現在のシンシンの状態について
3月11日、12日の交尾行動確認後、6月13日までの血液中の黄体ホルモンの値からは出産時期が近づいていると思われましたが、行動や体の変化については出産直前に見られる特徴を伴っておらず、6月18日以降は食欲も動きも通常の状態に戻る傾向にあります。
体の状態やホルモン動態から総合的にみて、シンシンは偽妊娠(※1)の可能性が高いと考えられますが、引き続き観察を続けます。
2.展示の再開について
2013年7月2日(火)から
健康管理のため、屋内外展示場と産室及び寝室を開放して出入りを自由にする形で、展示を再開いたします。
※産室及び寝室への扉を開放したままにしますので、シンシンが産室及び寝室に入っていると見えづらい場合があります。
【参考】
◎ジャイアントパンダの繁殖等に関する
一般的傾向について
1.性成熟
性成熟はオスで6.5~7.5歳、メスで3.5~4.5歳。
2.繁殖期
繁殖期は一般的に2~5月。秋に発情するケースもある。繁殖期には、行動量の増加、臭い付け、水浴びによる体冷やしの増加、食欲減退、恋鳴きなどが見られる。発情期間は2週間あるが、そのうち受精できるのは数日間だけある。
3.妊娠期間
交配後、83~200日の妊娠期間を経て出産する。妊娠期間は個体差がある。これは、着床遅延(※2)があるためで、受精してから着床するまでの時間が1日のものもあれば数週間かかるものもある。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。
4.妊娠時に認められる変化
(1)食欲の変化
出産の30日前頃から食欲が減退し、餌を残すようになる。出産間際には食欲が廃絶する。
(2)行動の変化
出産の15日前頃より巣作り行動が認められる。出産間際には行動が不活発になる。
(3)体の変化
出産の30日前頃に乳頭が確認されるようになる。出産間際には陰部の腫脹、乳房の腫脹が認められる。
(4)ホルモンの変化
出産前の3.7週~8週に妊娠の維持に必要な黄体ホルモン値の上昇が認められる。出産間際にはこの数値が下がる。
5.妊娠の確認
妊娠時に認められる変化により推測するが、偽妊娠(※1)という生理現象がみられるため、確定診断は難しい。
<用語の説明>
※1 偽妊娠(ぎにんしん)
偽妊娠は病気ではなく生理現象の一種である。排卵すると、出産にいたらなくても妊娠と同じ経過をたどることが知られている。発情の後、妊娠しなくても、ホルモン値の上昇、動作の不活発、長い休息時間、食欲不振、乳頭の明瞭化、乳房の腫脹、巣作り行動など妊娠した場合と同様の現象が現れる。これを偽妊娠と呼ぶ。出産することがないまま日数が経過し、上記の変化が認められなくなって終息する。
※2 着床遅延(ちゃくしょうちえん)
受精卵がすぐに子宮内膜に着床せず、胚盤胞の状態でしばらくの間子宮内に浮遊し、それから着床・発育を始める現象。温・寒帯に分布するクマ類やイタチ類、鰭脚類、カンガルーなどに認められている。着床までの時間によって妊娠期間が変わる。
◎2013年の「シンシン」の経過
3月11日、12日:「リーリー」との間で交尾行動を確認
5月23日:黄体ホルモン値が上昇
5月23日頃より竹の採食量が減少、休息時間が増加
5月28日頃より竹の採食量が通常の半分程度となる
5月30日:黄体ホルモンは高値を維持
6月4日より展示を中止
6月5日頃より動きが緩慢な時がみられる
6月6日:4つの乳頭が確認できるようになる
黄体ホルモン値が減少する
6月13日:黄体ホルモン値がさらに減少する
6月18日頃より竹の採食量が多い日が出てくる
動きに俊敏さが出てくる
6月20日:黄体ホルモン値がさらに減少する
6月25日:出産直前に見られる体の変化が観察されない
偽妊娠の可能性
6月27日:黄体ホルモンが低値になる
<過去の記事>
・
シンシンの近況(6月25日)
・
シンシンの近況(6月18日)
・
シンシンの近況(6月11日)
・
シンシンの近況(6月4日)
・
シンシンの近況(5月28日)
・
シンシンの近況(5月14日)
<関連サイト>
上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト
「UENO-PANDA.JP」
写真上:シンシン(06月27日撮影)
写真中:再公開当日のシンシン(07月02日撮影)
写真下:再公開当日のシンシン展示室前(07月02日撮影)
(2013年07月01日)
(2013年07月03日写真追加)