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アジアゾウ「アーシャー」、豊橋に出発
 └─2009/10/16

 こちらのニュースでお伝えしたとおり、2009年10月5日(月)、上野動物園のアジアゾウのメス「アーシャー」(推定32歳)が、愛知県の豊橋総合動植物公園に旅立ちました。

 今回の移動は、豊橋総合動植物公園にいるオスの「ダーナ」(推定38歳)との繁殖が目的であり、「ブリーディングローン」としておこなわれました(ブリーディングローンとは、繁殖を目的とした動物の貸出です)。アーシャーは1984年に上野動物園に来園して以来、繁殖を目指して2度、他の動物園に移動した経験があり、今回の移動は3度目です。

 アーシャーは性格が人なつこく、他のゾウの面倒見がよい「お姉さん」的な存在なので、上野動物園からいなくなってしまうのは、私たち飼育係にとっても、残されるゾウにとっても寂しいことですが、豊橋総合動植物公園での繁殖が成功してほしいという一心で今回の移動にのぞみました。

 10月5日当日は、アーシャーを運ぶ輸送箱の設置作業が朝からおこなわれました。輸送箱は幅約2メートル30センチ、奥行き約5メートル40センチ、高さ約3メートル、重さ約5トンにもなります。

 これをクレーンなどの重機で搬入し、ゾウ放飼場の一画にある扉の前に設置しました。本来であれば、ゾウを輸送箱に慣らすために何日か前から箱を設置して収容訓練をするのですが、上野動物園のゾウ放飼場は木で囲まれており、放飼場内に箱を設置することがむずかしく、また、アーシャーは過去に2回の移動を経験しているということをふまえ、輸送箱は当日の午前中に設置することにしたのです。

 午後から、アーシャーの箱入れ作業に取りかかりました。担当者が連れて行くだけで入ってくれればいちばんよいのですが、慣れていない狭い輸送箱の中に入るのは、3回目とはいえアーシャーもやはり警戒してしまいます。

 そこで、まず箱の近くまで連れて行き、前足にチェーンを取りつけ、担当者はアーシャーのそばにつき、別の職員が箱の反対側からチェーンをすこしずつ引っ張って、アーシャーを箱の中に誘導することにしました。

 念入りな打合せの後、箱入れ作業は午後1時半から実施しました。担当者4人に連れられて放飼場に出てきたアーシャーはすんなりと箱の近くまで来てくれたので、すぐに前足にチェーンをつけることができました。

 しかし予想通り、箱に入るのを警戒したアーシャーは、すこし入っては戻るという動作を繰り返します。しばらく同じ状態が続きましたが、30分もするとようやく箱の中へ入り始め、午後2時15分、箱入れ作業は完了しました。

 アーシャーは体重が約4トンなので、箱を含めた総重量は約9トンにもなります。これをクレーンで輸送用トラックに移し、出発準備は完了です。予定よりも早くアーシャーが輸送箱に入ってくれたため、午後4時には無事に上野動物園を出発することができました。

写真上から:
・輸送箱を設置
・アーシャーを輸送箱に連れて行く
・チェーンを引いてアーシャーを箱の中に誘導
・大型クレーンで輸送箱をトラックに載せる
・上野動物園から出発

※豊橋に到着したときのようすは、こちらのニュースをどうぞ。

〔上野動物園東園飼育展示係 三塚修平・藤本卓也〕

(2009年10月16日)



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