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アジアゾウ「アーシャー」、豊橋に到着
 └─上野  2009/11/01

 上野動物園のアジアゾウのメス「アーシャー」が、2009年10月5日、愛知県の豊橋総合動植物公園に出発しました(お知らせはこちら)。

 上野動物園を出発したのは午後4時。東名高速集中工事による渋滞の中、台風18号の接近による雨を避けるため輸送箱にシートをかけたりしながら、途中2回の休憩を取り、約7時間をかけて、午後11時すぎに豊橋総合動植物公園に到着しました。

 到着後は、豊橋総合動植物公園のゾウ舎から少し離れた来園者用の駐車場に待機し、10月6日の午前5時30分から搬入作業をおこないました。

 搬入作業は、輸送箱の積み替え作業、待機場所からゾウ舎までの移動、アーシャーを箱から出す作業を順におこない、午前6時40分ごろには豊橋総合動植物公園のゾウ舎にアーシャーを収容しました。到着から搬入作業終了まで、アーシャーは終始落ち着いており、予想外にスムーズに作業が進めることができました。

 その日の夜、初めて入ったゾウ舎でアーシャーは横になって寝ていました。天井に取りつけてあった部品を鼻先ではがそうとする「探索行動」も見られるようになり、室内では予想以上に早く環境に慣れていきました。

 室内の環境に慣らすため、搬入当日は放飼場に出す予定はなかったのですが、さすがに2回移動を経験しているアーシャーらしく、すぐに餌を食べ始め、室内をいたずらしていました。そこで、余裕が出てきたと判断し、その日の午後には放飼場に出すことができました。放飼場でのアーシャーは、ときどき耳を広げて緊張しているようすでしたが、泥浴びをしたり周囲を探索したりしながら、少しずつ慣れていきました。

 この調子で放飼場への馴致を続けようとしていたところ、3日目の朝にかけて台風18号が愛知県を直撃し、園内は停電になり、油圧扉も開閉ができず、放飼場への馴致は一時中断することになりました。しかし、台風が去った後は晴天に恵まれ、アーシャーを放飼場に出すことができました。

 じつは、アーシャーは豊橋総合動植物公園のゾウ舎への到着後、ひとつだけ苦戦していることがありました。もともと豊橋総合動植物公園のゾウ舎の油圧扉は上野動物園のものと比べると小さく、オスのゾウはそこをくぐって出入りしている状態でした。そのため、初めはそれを気にしているのかと思っていました。

 しかしアーシャーが気にしていたのは扉ではなく、ゾウ舎を出入りするときに必ず通らなければならない高さ5センチ程度の段差だったのです。そこで、室内と放飼場を出入り自由にして、何度も段差を通らせたところ、アーシャーなりにうまく歩幅を調整して出入りするようになりました。

 4日目には、豊橋のオスと柵越しに対面させたところ、オスはしきりに柵から鼻を伸ばしていましたが、アーシャーは微妙な距離をとり、あまり近づこうとせず、また、興奮するようすもなく、比較的落ち着いていました。

 このようにアーシャーは豊橋総合動植物公園についてから、全体的に落ち着いており、で大きな問題もなく、新環境にとけ込んでいってくれました。この調子で、オスとのペアリングもうまくいってくれればと思います。

 少し遠くに行ってしまいましたが、豊橋総合動植物公園で元気なアーシャーの姿を見ていただければ幸いです。

〔上野動物園東園飼育展示係 三塚修平・藤本卓也〕

(2015年11月01日)



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