ホウライカガミ(蓬莱鏡、キョウチクトウ科ホウライカガミ属)は南西諸島の海岸近くや林縁に自生する蔓性の植物で大きいものは5m以上になります。葉は対生し7~10cmほどで厚みのある楕円形です。
多摩動物公園の昆虫生態園ではオオゴマダラの幼虫の食草として、ホウライカガミを食草温室で栽培しています。暑さに強く昨年は猛暑でほかの食草が弱っているなかでもぐんぐん生育し葉を茂らせました。しかし、秋になるとほとんど伸びなくなるのでそれまでのあいだ冬季のえさも確保できるよう十分に大きく育てなければなりません。
ところが春先、新葉にアブラムシやカイガラムシがつき始め、気温が上がるにつれ驚異的なスピードで増え、またたく間に広がってしまいました。これらの吸汁加害によりホウライカガミの生育に影響が出るため駆除は必須ですが、幼虫のえさとして利用するので農薬は一切使えません。

駆除前のホウライカガミ
これまで担当者に引き継がれてきた駆除方法は、歯ブラシで擦り落とすか加工した散水ノズルを用い水で洗い流す方法です。いずれも完全駆除は難しく一時的に数が減っても数日でもとに戻ってしまいます。

駆除道具
何か別のよい駆除方法はないものか探していたとき、ふとナナホシテントウが目にとまりました。ナナホシテントウは幼虫も成虫もアブラムシを捕食する益虫としてよく知られています。生態園の周りの草地に数多く生息し、簡単に捕まえることができます。

ナナホシテントウの幼虫
そこで、毎日幼虫と成虫あわせて10匹以上を3日間、計30匹以上捕まえホウライカガミの上に放しました。しかしどこへいってしまうのか放した翌日には姿が見あたりません。何かに襲われていなくなったとも考えられますが、かなり動き回っていたのでおそらく逃げていってしまったのでしょう。農業分野では遺伝的に飛翔能力を欠くテントウムシ(ナミテントウ
[※])が「天敵製剤」として利用されています。たしかにテントウムシを定着させるのは難しいようです。
留まってくれないのでいったいどのくらい捕食するのかわかりません。そこで逃げ出さないように袋状の網をかけ、中に数匹のテントウムシを入れてようすをみました。

袋掛けしたホウライカガミ
数日後に網を開けてみるとカイガラムシは残っていましたが、アブラムシは手作業では落としきれない細かいところまできれいに食い尽くされていました。捕食能力は期待以上です。新たに害虫がついている芽先に袋をかけ直し捕食効果を試験しています。今後テントウムシを利用した害虫駆除の方法も取り入れていきたいと思います。

駆除後のホウライカガミ
^ ※自然界に存在するさまざまな個体の中から飛翔能力の低いナミテントウを探しだし、それらを交配することで遺伝的に飛翔能力のを欠くナミテントウを育成。天敵製剤として利用されている。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 若井〕
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