動物の健康は、えさの採食量やフンの状態、体つきなど動物が発するさまざまな情報から判断することができます。体重もそのひとつであり、定期的に測定することにより数値の変化から健康状態を把握することができます。また、麻酔や投薬をする際には、体重によって薬の投与量が変わるため、体重測定は動物を治療するうえでも重要な情報となります。
多摩動物公園で飼育しているゴールデンターキンの「オウテン」(オス)は、ほかの個体に比べて腰の骨が目立ち、目視でも痩せていると判断できたため、以前よりえさの内容や給餌方法による体格改善を試みていました。オウテンは、主食で与えている乾草よりも青草や木の葉などを好み、乾草を多く残してしまいます。乾草の質によっても採食量が変わるため、主食の乾草だけで体格を維持することが難しい個体です。
これまでは肉付きなどを目視のみで判断していましたが、ゴールデンターキンは体毛が長く皮膚も厚いため、体格のわずかな変化がわかりにくく、改善の経過を正確に判断することが困難でした。そこで体重と目視の二点から健康状態を飼育係が確認できるよう、2023年12月から体重測定の練習を開始しました。
ヒト用の体重計(左)とオウテンで使用した体重計(右)
オウテンは、物おじしない性格で、大きな体重計を初めて見ても驚くことなく近づき、1回の練習で体重計に乗ることができました。2023年12月から計測を始め、月に一度定期的に実施しています。
2024年2月に体調を崩した際は、体重が減少しました。採食量が減り、軟便が続いたため、まずは軟便の改善に取り組みました。整腸剤の投与や水分の多い青草の減量、寝室にマットを敷くなどさまざまな取組みをおこない、2か月ほどで軟便は改善しました。現在は、好物の青草を乾草に混ぜ込んだり、えさを細かく切ったり、えさの内容を変更したりすることで乾草の採食量を増やす試みを続けています。
体重計に乗る「オウテン」
2024年5月の測定でオウテンは、236kgであることがわかりました。ゴールデンターキンのオスの体重は、250~350kgほどのため、ほかの個体と比べると軽めであることが確認できました。今後もえさのくふうと定期的な体重測定を継続しておこない、健康管理に努めます。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 矢川〕
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