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ゴールデンターキンのにおい
 └─2019/03/01

 ゴールデンターキンの放飼場前に来ると、ただよう独特な強いにおいにすぐ気づきます。しばしば「くっさーい!」という声が聞こえてきます。そう言いたくなる気持ちはよくわかります。担当者でさえ、「くさい」とつぶやいてしまうほどですから。でも、このにおい、毎日かいでいますが、嫌いじゃないです。


油分で体が茶色くなった「フウカ」(メス)

 においのもとは、ターキンのメスの体から分泌される油分です。メスの顔や体を観察すると、ベージュ色の毛がところどころ茶色くなっています。これは汚れではなく、毛についた油分の色なのです。そして、水で洗うと茶色い色素はすぐに落ちて、ベトベトしたものだけが残ります。そのため、雨の日は毛についた茶色が流されて、元のベージュ色に戻ります。雨の降らない日が続くと、毛はだんだん濃い茶色になり、においは日増しにきつくなっていきます。


油分で「隈取」のような顔になった「ホイ」(メス)

 ただし、メスであっても、生まれてまもない子どもは全身がふわふわした焦げ茶色のカールした毛に覆われていて、まだ油分のベトベトする感じはありません。生後1年も経つと、毛の色や質がおとなに近づいてきて、油分が出てきます。

 おとなのメスの体には、長くて硬い上毛と、ふわふわした綿のような下毛が密に生えています。雨にあたった後のメスの体毛を間近で見ると、油分が水をはじいているのがわかります。また、毛が密に生えているので、毛の奥まで完全に濡れていません。このような、標高数千メートルの高山での生活に適応したターキンの体のしくみに、日々感動しています。

 ちなみに、生後まもないオスの子どもの毛は、メスの子どもの毛と同じです。しかし、成長するにしたがって金色の毛に生え変わります。メスとは異なり、おとなのオスには綿のような下毛はありません。また、オスの体からは油分は分泌されないので、においはしません。

 除菌・消臭対策であふれかえっているこの時代、これほど強烈なにおいに遭遇する機会はめったにないと思います。この油分もターキンの特徴のひとつです。ターキンのにおいも感じながら、ターキンの魅力を堪能していただければ担当者としてもうれしいです。

 もしかしたら、このにおいがターキンたちの間ではコミュニケーションツールとなっているのかな、と想像をふくらませたりもします。他にも動物に触れたり、動物の鳴き声を聴いたり、私たちがもっているさまざまな感覚をフルに使って動物を観察できるのも、また動物園のおもしろさだと思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 生井澤初枝〕

(2019年03月01日)


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