多摩動物公園のアカカンガルーは、先月3頭の子が出袋(母親の袋から全身が完全に出ること)し、30頭という大所帯になりました。
これだけの頭数が生活していると、それぞれが病気や怪我をすることが少なくありません。きちんとえさを食べているか、ようすにおかしいところがないか観察して、毎日異常がないかチェックをしています。そこで異常が見つかった場合、どの個体がどのような状態でいるのか記録し獣医に伝える必要があります。
その際に重要になるのが個体識別です。それぞれの個体を識別できなければ、どの個体について話をしているのかわからなくなってしまいます。
個体識別をする際、見た目の特徴から判断することもありますが、なかには特徴が似通っており、なかなか識別することが難しい場合があります。そこでわかりやすくするためのくふうとして、耳標(じひょう)と呼ばれるプラスチック製のタグを耳に装着しています。
アカカンガルーを観察してみると耳にタグが2つ付いていることに気づいた方がいるかもしれません。多摩動物公園のアカカンガルーは見た目の特徴に加え、1頭1頭に名前、マイクロチップ、そして耳標を装着することで個体識別をおこなっています。
耳標は子が出袋し、ある程度成長したタイミングで装着します。オスは左耳に、メスは右耳に装着し、複数の色の中から2色を組み合わせることで、一目でどの個体か判別できるようにしています。この耳標は、アカカンガルーにとって名札のような役割を果たしています。
左:ワウ(オス)、右:ファズ(メス)
さらによく観察してみると、なかには耳標が付いていない個体もいます。その理由はさまざまですが、このような個体は少なく、逆に付いていないことが特徴になっています。耳標が付いていなくても、下の写真のようによく観察し、見比べてみれば違いがわかります。
左:アンジュ(オス)、中央:サヤカ(メス)、右:ソレル(メス)
どうでしょう。違いを見つけることができたでしょうか。こうしてじっくり見てみると顔の色・模様、耳の形や目の位置・大きさ、表情など、さまざまな特徴が見えてくるのではないでしょうか。
1頭1頭見分けられるようになると、個体ごとの動きやくせ、それぞれの関係に新たな発見があり観察することがもっともっと楽しくなります。
多摩動物公園のアカカンガルー舎はアカカンガルーと来園者との距離が近く、より観察のしやすいウォークスルー式の展示になっています。日中は寝ていることが多く、「休日のお父さん」なんて呼ばれがちな彼らですが、ぜひじっくり観察して違いを発見してみてください。
〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 白尾〕
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