2022年、多摩動物公園では4頭のアカカンガルーが
出袋(母親の袋から完全に外に出ること)しました。
アカカンガルーは約33日という短い妊娠期間でとても未熟な状態の子どもを産み、生まれた子どもはすぐに自力でお母さんの袋までよじ登ります。子どもがとても小さく、妊娠や出産の確認が難しいため、多摩動物公園では子どもの出袋を飼育係が確認した日を誕生日(出袋日)としています。
今回は2022年に出袋した4組の親子のようすを紹介します。
2022年初めに出袋を確認したのは4月11日、「シンハー」の子どもの「ヨナ」です。シンハーは4頭の母親のなかでいちばん若く、今回が初めての子育てです。シンハーは子どものときから落ち着きがなく体もまだ小さいため、どうなるか心配しました。ですが、そんな心配をよそに、ヨナは順調に成長し、すでに体もシンハーの半分ほどの大きさになり、ほかのおとなに混じってえさを食べています。
次に6月13日に「コルン」の子どもの「モスコ」、7月17日に「デイジー」の子どもの「ミュール」が出袋しました。この2組は対照的で、観察していてとても個性を感じました。
コルンは4頭の母親のなかではいちばん年上で子育て経験もあるからか、少しスパルタ気味で、モスコがコルンを呼んで鳴いていても、気にせずにえさを食べているようすもしばしば見られました(授乳などの子育て行動はしっかりおこなっていました)。そんな環境で育ったためか、モスコはほかの子どもよりえさを食べ始めるのが早かったり、母親が離れてもあまり気にしなかったりと、成長が早い印象です。
それに対しデイジーは、出産経験はあるのですが、これまでの子どもは出袋する前に死亡してしまい、今回がほぼ初めての子育てになります。そんなデイジーはコルンと比べると慎重で、ミュールが離れるとすぐに探すようすも見られました。ミュールもモスコと比べると母親の近くにいることが多く甘えん坊な印象でした。
対照的なモスコとミュールでしたが、2頭とも順調に成長し、最近はどちらもミルクをもらうとき以外は、ほとんど母親から離れて行動しています。
最後は11月22日に出袋した「ベル」の子どもです。まだ名前はついていませんが、出袋を確認してすぐに放飼場を走り回るなど、ほかの3頭の子どもよりも活発な性格のようです。ベルは2021年に一度子どもを出袋させたのですが、残念ながらその後2か月ほどで死亡してしまいました。そのため、今回の子はなおさら元気に成長してほしいと思っています。
現在、ほかの親に出袋前の子どもがいることを確認しているので、2023年もどんな子育てが見られるか楽しみです。
左からモスコ、ベルの子ども、デイジー
(2023年01月13日)