多摩動物公園では、7月14日の
世界チンパンジーの日 にあわせ、使用済み携帯電話の回収をおこなっています(
イベントの詳細はこちら をご覧ください)。
携帯電話・スマートフォン回収告知ポスター
「なぜ動物園で携帯回収?」「チンパンジーとレアメタルのつながりって何?」と思う方が多いのではないでしょうか? まったく関係がないようにみえますが、この問題はじつは私たちの生活と深く関わっています。
レアメタルは私たちが使うスマートフォンやパソコンといった電子機器になくてはならない原材料のひとつです。希少な金属であるレアメタルは、産出される地域が限られ、ゴリラやチンパンジーの生息地であるアフリカでも、錫や金、タンタルといったレアメタルを採掘するために森林が伐採されています。
私は2016年にアフリカのウガンダのBudongo Conservation Field Stationに行き、チンパンジーたちがすむ森で実際に違法に森林伐採がおこなわれている現場を見ました。森林伐採の一因は、スマートフォンをはじめとして大量の電子機器を使う私たちにもあります。遠く見えて身近な問題です。
伐採された木
伐採などにより生息地を奪われた結果、100年前に推定100~200万頭いたチンパンジーは、2003年時点では推定17~20万頭と5分の1以下にまで減少し、現在は絶滅危惧種となっています。
森林伐採だけではなく、密猟も生息数が減る要因です。ウガンダの森の中にはワイヤーでできた多くの「くくり罠」が仕掛けられ、腕や足を失ったチンパンジーもいました。
SNSやテレビを見て、チンパンジーがペットになると考えてほしがる人がいることも密猟の要因のひとつです。1頭の子どもを捕獲するために群れのなかまが10頭以上殺されることもあります。子どものころはかわいいチンパンジーですが、おとなになると、とても力が強く、個人で飼育し続けることはできません。無意識にSNSなどでチンパンジーの子どもと人間のふれあいを拡散してしまうことも、じつは悪い影響を与えているのです。
チンパンジーの親子
とはいえ、これはアフリカの現実で、私たちは何をすればよいのかと思うことでしょう。私自身もそう思うときもあります。でもじつは、事実を知り、問題を考えるだけで、みなさんはすでに保全に取り組んでいます。身近な人と野生動物について話す、正しい情報を得て広める、フェアトレード商品を選ぶ、小さくても、すばらしい取組みはたくさんあります。
さらに、もしもいま、家に眠っている携帯電話やスマホがあれば、多摩動物公園に持ってきてはいただけないでしょうか? 2023年9月26日(火)まで、使用済み携帯電話・スマートフォンを回収しています。チンパンジーだけではなく、アフリカにくらす多くの動物たちを助けることになります。ちなみに携帯電話・スマートフォンは動物園の入り口でも回収しているため、入園しなくても大丈夫です(
詳細はこちら をご覧ください)。
「思い出もあるし、なんだか捨てたくはないな、どうしようかな」と思っているスマホをボックスに入れたら「いいことできた!」と、なんだかスッキリした1日があなたを待っている……かも!?
VIDEO 多摩動物公園では不要な携帯電話・スマホを回収しています
〔多摩動物公園北園飼育展示係 野田〕
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