多摩動物公園では、
2013年から2頭の家畜馬(北海道和種)を飼育していましたが、
2022年12月5日に桃太郎が死亡したため、仁太郎1頭になりました。それから5ヵ月がすぎ、1頭になった仁太郎はというと……
桃太郎とくらしていたときと変わらず、おっとりとすごしていますが、1頭になったことで気持ちに変化があるようです。周囲の音やようすをこまめに気にかけていた桃太郎がいなくなり、自ら周囲の音を聞こうと敏感になったり、飼育係のことをよく見るようになりました。
多摩動物公園では、「
ホースマンシップトレーニング」という方法で家畜馬の飼育管理をしています。ウマがウマに対しておこなう行為を人が真似ることにより、信頼を得て、尊敬されるリーダーとして認められるようにします。力でウマを動かすのではなく、ウマ自身が進んでリーダーの指示に従うようにするトレーニングです。ウマはトレーニングをしている飼育係のことを「なかま」と思うようになります。
桃太郎が生きていたころは、2頭の関係が強く、飼育係のことは二の次になることもありました。しかし、仁太郎が1頭になってからは、飼育係どうしが話していると、群れのなかまに加わろうとするようにそばまで寄ってくることが多くなりました。そんなときに話しかけると、仁太郎はじっと見つめ、話を聞きます。ふだんから飼育係をよく見る行動も、なかまの居場所を確認するためなのです。
桃太郎の死について仁太郎は群れのなかまが減った寂しさを感じているかもしれませんが、ほかの群れのなかまと認識している飼育係と生きていくことで安心しているのかもしれません。今は乾草をよく食べ、よく寝て、ゆったりと仁太郎の時間をすごしています。
ある晴れた日には、気持ちよさそうに砕石の上で寝息を立てていました。
【動画】砕石の上で寝る仁太郎
また違う日には、1頭で運動場を走り回って遊んでいました。激しく走り回りすぎて、隣の展示場のモウコノウマが注目するぐらいでした。
【動画】1頭で走る仁太郎
いつでもマイペースでおっとりとした仁太郎は変わりませんが、1頭になってからは飼育係に対して、より多くの意思疎通を求めて来るようになりました。みなさんもぜひ、飼育係とコミュニケーションを交わしている仁太郎のようすを見に来てください。
〔多摩動物公園南園飼育展示1係 齋藤〕
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