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家畜馬の調教講習とこれまでの積み重ね
 └─2016/12/23

 2016年11月中旬、北海道の「D-base」(家畜馬「道産子」を中心とした牧場)の代表・中村三保子さんを多摩動物公園にお招きし、多摩であらたにウマに関わる職員にはウマの扱い方を、以前に講習を受けた者にはフォローアップ講習をしていただきました。中村さんは多摩動物公園の家畜馬「桃太郎」と「仁太郎」(じんたろう)の調教を担当された方です。

ローピング(ロープに慣らし、ウマが指示以外のことを気にしないようにするための訓練)ロンジング(ウマを円周に沿って運動させ、回転方向や速度、停止などの指示に従うようにする訓練)

 桃太郎と仁太郎の調教は「ホースマンシップ」という考え方に基づいています。ホースマンシップとは、高圧的な力による制御ではなく、ウマの生態を利用した調教です。ウマは群れで生活をし、群れにはリーダーが存在します。リーダーは力や知恵をもち、他のウマから信頼され、群れを導くことができます。そこで、この習性を人間がまねることにより、ウマから尊敬と信頼を得てリーダーになれば、ウマは指示に従ってくれるようになります。実際には、餌や水を与えることが信頼につながります。また、ウマを動かして彼らが立っている場所を奪うなど、力を示すことで尊敬が得られるとされています。

 ホースマンシップの理論を簡単にご紹介しましたが、私自身、以前講習を受けたものの、ウマの「本担当」になって8か月、実際にはまだまだ未熟者です(動物の飼育は複数の職員が交替しながら担当しますが、メインの担当者を本担当といいます)。頭でわかっても実地はなかなかうまくいきません。

 中村さんが多摩動物公園のウマを動かすととてもスムーズに動きます。当然のことではありますが、驚きました。君たち、こんなに動けるのね、と。今回講習を受け、私は指示の出し方が曖昧であること、また、意識せず体が後ろへ引き、ウマたちに場所を譲ってしまっていることがわかりました。まだまだ精進が必要です。

 講習を始める前に、桃太郎と仁太郎の状態をチェックしていただきました。調教が崩れていないか、つまり調教の状態が保たれているかどうかの確認や、蹄の状態や健康状態などのチェックです。とくに調教の崩れは担当者の日々の取り組みが表れるので、ドキドキものです。しかし、とてもよい状態であると評価をいただき、ほっとしました。

 今回講習中に印象に残る出来事がありました。休憩中、みんなで舎内に入って話をしていた時のことです。ウマ舎の扉は開けたままですが、ウマたちは覗きには来るものの、入っては来ません。舎内には干草などの餌が置いてあります。どうして彼らは入ってこないのかと中村さんが尋ねられたので、一歩でも入るとそのたびに後ろへ下がらせるように日々教えていると説明しました。中村さんは感心され、こういう日々の細かなことはつい手を抜きがちだが、それをおこなうことでウマとの関係がよくなるとおっしゃって下さいました。現担当者のみならず、今までの担当者が積み重ねてきたことを褒めていただいたようでうれしく思いました。

 今後もウマを扱う技術を向上させ、安全にウマたちに触れたり乗ったりして頂けるよう取り組みを続けます。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 生駒正和〕

(2016年12月23日)


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