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モニタリングサイト1000里地調査報告──冬の野鳥観察
 └─2021/02/05
 今年もモニ1000の季節がやってきました。モニ1000とは、「モニタリングサイト1000里地調査」の略で、環境省から委託を受けて実施している野鳥調査です。年2回、繁殖期(5月中旬~6月下旬)と越冬期(12月中旬~2月中旬)の園内調査を10年以上続けています。調査目的や調査方法については昨年ご紹介しました(2020年2月14日記事)。今回は、2021年1月下旬の調査で見られた野鳥や野鳥観察の楽しさについてご紹介します。

 冬は落葉樹が葉を落としているので、夏の調査に比べて、枝にとまった野鳥を見つけやすく、野鳥観察に最適な季節です。園内では毎年30種類以上の野鳥が観察されていますが、昨年は工事の影響か、水鳥があまり見られず、観察できた数も少ない印象でした。今回はどんな鳥たちに出会えるのかと期待を胸に、双眼鏡を持って歩き始めました。

コガモの群れ
ジョウビタキのメス

 まず、最初の水辺(非公開エリアにある天然池)で私たちを出迎えてくれたのは、雌雄半数ずつ、100羽を超えるコガモの大群でした。コガモは日本で見られるカモ類の中では最も小さいカモで、いっしょにいた十数羽のマガモと比べても2/3ほどの大きさしかありません。チョコレート色の頭部に光沢のある緑色のラインが美しく、コガモたちで埋め尽くされた池は、まるで小さな宝石箱のようでした。例年は、10月頃に水鳥池(正門から近い人工池)に飛来し、冬の訪れを教えてくれていましたが、今年は鳥インフルエンザの対策で水鳥池の水が抜かれていたこともあり、安心して過ごすことのできるこちらの池にやってきていたようです。

 次に、思わず歓声が上がったのは、高木に止まっていたオオタカと思われる猛禽が飛び立った瞬間でした。オオタカは多摩丘陵にも生息している鳥ですが、園内ではたまに上空を飛んでいるのを見かけるくらいで、止まっている姿を見られるのはかなりまれです。このように、少し珍しい鳥に出会えると、次はどんな鳥に出会えるのかと気持ちが高まります。その後、私たちは美しい色の羽をもつジョウビタキやルリビタキ、頭の冠羽が特徴的なカシラダカやモズなどに出会うことができました。

 そして、鳴き声や姿で鳥の種類や雌雄がわかるようになると、鳥たちの行動が見えてくるようになります。繁殖期の調査では、求愛しているヤマガラのオスがメスに小さな虫をプレゼントしようとしているところに出くわしました。そのまま静かに観察を続けていると、メスはなかなかそのプレゼントを受け取ろうとしません。「そんな小さな虫じゃ私を落とせないわよ!」とオスをじらしているかのようでした。さらに野鳥観察の上級者になると、鳴き方によっても違いが分かるようで、甲高い声で鳴きながらメスを追っているシジュウカラを見て、あれは発情中のオスで、「早く(メスと)二人きりになりたい!」と言っているようだと教えてくれました。

 このように野鳥観察の楽しさは、季節を感じることができること、宝探しのような思いがけない出会いがあること、そして鳥の行動観察をとおして、ときどきドラマが垣間見られることにあると思っています。コロナ禍でなかなか外出はできない状況にはありますが、体調が万全でしたら、しっかり感染防止対策をして、近所の野鳥を探してみてはいかがでしょうか。思いがけない、とっておきの出会いが待っているかもしれません。

「モニタリングサイト1000」公式サイト(環境省生物多様性センター)

〔多摩動物公園野生生物保全センター 下川〕

(2021年02月05日)




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