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モニタリングサイト1000里地調査で鳥類を調査
 └─ 2020/02/14

 みなさんは「モニタリングサイト1000」を知っていますか? これは環境省と日本自然保護協会が共同で2003年から進めているプロジェクトです。生物相や指標生物、水環境といったさまざまな項目について全国で統一された調査をおこない、里地里山という複雑な生態系の変化を全国レベルでとらえることを目指しています。全国に1000以上の調査地があり、多摩動物公園では2008年以降、鳥類の調査に毎年協力してきました(参考:環境省自然環境局生物多様性センターモニタリングサイト1000)。

 調査は環境省のマニュアルにしたがっておこないます。鳥類の調査は渡り鳥の移動が少ない繁殖期(5月中旬~6月下旬)と越冬期(12月中旬~2月中旬)に設定した1kmのルートを一定の速度(時速2km程度)で歩き、自分を中心とした50mの半球内で確認された鳥の種名・個体数を記録します。したがってこの時期の調査は越冬期の調査になります。今年も2020年1月9日と23日の2日間調査をおこないました。


多摩動物公園内での調査のようす

 参加者は多摩動物公園の飼育展示課のほか教育普及課の職員も含めて毎回10人程度で、保全センターが中心となって調査をおこなっています。調査時間は繁殖期では日の出から8時まで、越冬期では午前中と、マニュアルで決められています。1月の東京の日の出は6時50分前後なので、7時30分に調査開始です。

 コースは水辺、草地、林内と里地の主要な景観が含まれるように設定されています。繁殖期は青葉が茂る季節なので鳥の姿を探すのは困難ですが、1月には多くの木は葉を落としているため、鳥の観察には最適です。ただし寒さが身にしみる季節なので、しっかり防寒対策をして双眼鏡を手にして出発です。

 目視による確認はもちろんですが、鳴き声で判別できる鳥も記録していきます。見慣れない鳥を見つけると観察に参加している職員のテンションも上がり、歩みも遅くなりがちです……。

 約10年間この調査を続けていますが、観察される鳥の種数に大きな変化はありません。越冬期の調査では30種類以上の野鳥が観察できます。観察できる種類や数は天候にも左右されてしまいますが、ここ数年で観察される鳥の数が以前より減っているようです。特に水鳥の減少は顕著です。園内各所でおこなわれている工事が影響しているのかもしれませんが、園内の調査だけでなく全国的にも鳥類は緩やかな減少傾向が示唆されているので、工事は関係ないのかもしれません……。

 多摩動物公園は多摩丘陵の一部であり、周囲も長沼公園や平山城址公園など多くの雑木林で囲まれています。動物園内にも野鳥のみならず多くの野生動物が生息しています。園内で観察される野生動植物ついては園内配布物の「たまたま発見!」に掲載されていますので、ぜひご覧ください。

〔多摩動物公園野生生物保全センター 倉持浩〕

(2020年02月14日)


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