多摩動物公園のチンパンジーの「ピーチ」がメスの「プラム」を出産して1年が経ちました。ピーチは育児放棄の経歴があったため、出産当時、無事に育てられるかどうか心配されていましたが、今ではりっぱに子育てをしています。詳しくはこちらの記事をご覧ください(「
チンパンジー『ピーチ』の成長──出産と子育て」2019年10月25日)。
ピーチにとって初めての育児のためか、出産前に比べて行動が慎重になったように見受けられます。出産後生まれてしばらくのあいだ、プラムを抱いて高い所に登るときなど、子が落ちないか何度も確認している姿がよく見られました。また、他の個体にプラムを触られるのがあまり好きではないようで、そんなときはプラムを抱いて隠すこともありました。プラムが自分の意志で行動するようになっても、ピーチは常に見張っていて、なにかあればすぐにかけつけます。
【動画】母親ピーチに終始つかまっている個体が子のプラム(メス)。
ピーチと遊んでいる個体がイブキ(オス)
また、まわりに対する態度の変化も見られます。ピーチはもともと群れの中で立場の強い個体なので、弱い立場の個体を攻撃したりえさを奪ったりすることもよくありました。でも出産後は性格が少し丸くなったようで、まわりへのあたりも柔らかくなったような印象を受けます。また、プラムと同い年のオスの「イブキ」に対しては非常に優しく接しています。実の母親である「モモコ」よりも、ピーチの方がイブキに関わっている時間が長いのではないかと思うほど、いっしょに遊んでいる姿がよく見られます。
そんな母親に育てられているプラムも、1歳を迎えて個性が現れてきました。同い年のイブキに比べると警戒心が強く、担当者はもちろんのこと他個体が近づいてくると、母親の後ろに隠れてしまうことがよくあります。一方、好奇心も強いらしく、ピーチのうしろに隠れながら他個体に触ったり遊んだりしており、プラムの中でも好奇心と警戒心の葛藤があるようです。
成長につれ、プラムは母親ピーチともに個性が変化していくと思います。今後も定期的にピーチとプラム親子のようすをご紹介します。楽しみにお待ちください。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 佐藤澄音〕
(2020年10月09日)