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シロオビアゲハは十人十色
 └─2018/07/20

 多摩動物公園昆虫生態園の大温室には、1年を通して20種ほどのチョウが飛んでいます。チョウによっては季節によって増えたり減ったりするのですが、いつでも見られる種の一つが、やや小型のアゲハチョウのなかま、シロオビアゲハです。

 シロオビアゲハは国内ではトカラ列島以南に分布する南方系のチョウで、サルカケミカンやヒラミレモンなど、ミカン科の植物が食草です。オスはその名の通り、黒い地の後翅に白い帯の模様が入りますが、メスはオスと同じ模様をもつ通常型(Ⅰ型)のほかに、ベニモンアゲハによく似た模様をもつベニモン型(II型)があります。


シロオビアゲハのメスの通常型(右)とベニモン型(左)

 ベニモンアゲハは体内に毒をもっており、食べるととても不味いため、鳥などの天敵から狙われにくいようです。シロオビアゲハのベニモン型はベニモンアゲハそっくりの擬態によって、天敵を避けていると考えられます。

・参考記事「お腹の赤いベニモンアゲハ」2007年2月16日

 大温室では通常型とベニモン型の両方が見られるのですが、調べてみるとかなりの個体差があることがわかりました。通常型の場合、帯の太さが個体によって違いますし、さらに模様の一部が黄色っぽくなる個体や、後翅の縁に赤い模様が並ぶ個体が見られることもあります。

 ベニモン型の場合、後翅にある白い模様の大きさに差があるほか、模様の色が白から赤に置きかわったような個体や、左右の翅で模様が異なる個体など、じつにさまざまな差が見られます。

「通常型」における個体差
「ベニモン型」における個体差

 これら個体差の少なくとも一部は遺伝子によって引き起こされているようで、変わった模様がうまく遺伝していくよう、採卵などの際にもくふうを重ねていくつもりです。

 シロオビアゲハは大温室でもっとも数の多いアゲハチョウ類なので個体差もバリエーションが大きいのですが、ぜひじっくり観察し、お気に入りの模様の個体を見つけてください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 角田淳平〕

(2018年07月20日)



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