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シロオリックス便り
 └─2017/12/22

 多摩動物公園アフリカ園サバンナの各動物舎では耐震工事を進めています(お知らせ)。その工事にともない、アジア園の2か所に引っ越したシロオリックスのその後のくらしぶりをお知らせします。

 メス7頭はアジア園のシフゾウ舎に移動しました。スペースがこれまでよりも狭くなったこと、また、シロオリックスだけになったことがどのように影響するのか心配でした。


えさを食べるメスたち

 移動直後は、個体間の優劣を試すように角を突き合わせたり、追われて転倒し、小さな傷を負ったりすることが増えました。そこで不要な障害物を撤去し、餌場を頭数分置いたり、走ったときに踏ん張りがきくように足もとの砂を厚めにしいたりした結果、動物自身も環境に慣れたことも手伝い、落ち着いてきました。

 また、角の生えぎわや顔を掻くために、以前シロオリックスたちは金網や木柵を利用していましたが、シフゾウ舎は幅の広い鉄柵で囲われているので、角を掻くにはしっくりこないようでした。そこで試しに使い古した竹ぼうきを石垣の上に取りつけたところ、「サクラ」や「ブルーム」が興味を示して近づくものの、結局、優位の「モカ」が独占してしまい、群れの中の騒動のもとになるため、やむなくすぐ取りはずしました。

竹ぼうき利用中
竹ぼうきの順番待ち

 それから2か月ほどが経ち、あらためて竹ぼうきを違う場所につけてみました。最初にモカが顔を寄せて使い、その後ほかの個体が使っても邪魔をすることはありませんでした。今では順番待ちをしながら使っています。

 しかし、古ぼうきでは数時間しかもたず、新品を用意すると、少なからぬ個体に穂先が食べられてしまいます。そこでキリンの食べ残したシラカシの枝を砂山に差してみたところ、細い枝をきれいに食べてくれました。また、ぬかるみの補充用として置いた砂山に角を刺して利用するようすも見られます。新たな環境を積極的に利用するシロオリックスにたくましさを感じます。

シラカシの枝を食べる
オス「クラウン」。仕切板の向こうにダチョウが見える

 一方、旧モウコノウマ舎に1頭でくらすオスの「クラウン」は、同居するダチョウやグレビーシマウマとは高めの仕切り板でへだてられているため、おたがいに見えない状況です。安全性を考慮したためですが、各個体が場所に慣れたら、ようすを見ながら改善していくつもりです。

 また、クラウンには竹ぼうきの代わりとしてデッキブラシを仕切り板に取りつけました。ところがクラウンはこれを警戒し、寝室との出入りを渋ったり、遠巻きに見つめたりする状況が続きました。結局、デッキブラシを利用するまでおよそ1か月も要しました。新たな遊具を試そうにも、クラウンにはメス以上の慎重さが求められていることを痛感しました。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 中尾理幸〕

(2017年12月22日)


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