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オランウータン「バレンタイン」と「チェリア」の一年
 └─ 2017/11/16

 2016年12月25日に2頭のボルネオオランウータンが、よこはま動物園ズーラシアから多摩動物公園にやってきました。「バレンタイン」(メス、1986年2月14日生まれ)と娘の「チェリア」(メス、2014年11月19日生まれ)です。

 バレンタインは過去に二度の出産を経験しているものの、どちらもうまく子育てできず、チェリアも人工哺育で育てられました。2頭は、育児学習の機会を得ること、オランウータン本来の社会性を学ぶことを目的として多摩動物公園にやってきました(来園のお知らせはこちら)。

 来園から約1年が経とうとしている今、2頭がどのように過ごしてきたのかをご紹介しましょう。

 バレンタインは来園当初、下にあるシュート(移動用の通路)まで降りるのも怖いのか、部屋から出ませんでした。その後、屋外の放飼場に出て行けるようになっても地面の上では落ち着かず、高いヤグラから降りられないままに外で一夜を過ごしたこともあります。

 他の個体と同居の際は、力の入れ加減がうまくいかなかったり、相手に噛みついてケガをさせたりしてしまうこともありました。しかし、今では地面に降りて枝を取りに行くこともできるようになりましたし、とくにリキ(オス、2012年11月14日生まれ)とは転がりあって遊ぶほど仲のよい関係になりました。ヤシの実も一人占めしたりせず仲間に分け与えるなど、社会性がだんだん身についてきたように感じます。


千切ってきた草を食べるバレンタイン

 人に育てられていたチェリアは多摩動物公園で代理母に託すことになり、ジュリー(メス、1965年5月6日生まれ)という年配の個体が候補になりました。ジュリー自身は2回の出産を経験しており、一度目は死産でしたが、二度目はしっかりと子を育て上げています。

 来園初日からチェリアとジュリーを隣どうしの部屋にしたところ、雰囲気もよく、口に含んだ水をジュリーがチェリアに与えようとする行動も見られました。3日後にいっしょにしましたが、まったく問題ありませんでした。
 その後もジュリーはチェリアをわが子のように気にかけ、何かあるとすぐに腕の中に抱き寄せます。来園時は長かったチェリアの体毛も、外で運動するようになって短くなり、遊ぶことで力もついてきて、オランウータンとして着実に成長しています。


抱き合うジュリーとチェリア、覗き込むリキ

 バレンタインは2年を目安にズーラシアへ帰る予定ですが、チェリアはしばらく代理母のもと、オランウータンとしての学習を続ける予定です。日々成長する2頭をぜひ見に来てください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 野村星矢〕

(2017年11月17日)


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