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ライオンへ香りのプレゼント
 └─2017/02/10

 ライオンは毎日の生活の中で、ちょっとしたものをおもちゃにして遊ぶ事がよくあります。とくにまだ幼い子どもたちは、なんでもない木の切れ端や根っこ、石ころなどをおもちゃにして取り合う遊びをよくしています。

 多摩動物公園では、もうすぐ2歳になる「イチゴ」と「ニイナ」の姉妹(2015年4月11日生まれ)が今まさに遊びに夢中です。いろいろな物を見つけては噛みついてみたり、引っぱってみたり、同じようなものが他にたくさんあるにも関わらず、取り合いながらあちこちへ運び歩いて遊んでいます。

 そういった楽しみのきっかけを飼育係が作れないかと考え、私たちもいろいろな工夫をしています。たとえば、落ち葉を掃き集めて山にしたり、新しい丸太を置いたり、藁や乾草をまいたり、漁業用のブイや牛骨の与え方を工夫して鎖で樹にぶら下げてみたりしています。そうした工夫のひとつに、形のない「におい」のプレゼントもあります。

 ライオンは野生ではさまざまなにおいを嗅ぎわけ、獲物を探したり、危険を察知したりしています。動物園の生活の中にもにおいの変化があったらどうでしょうか?

 まず試したのは、ゾウやキリンなどの糞です。放飼場にまいておくと、ライオンたちはすぐに寄って来てにおいを嗅ぎ、なんとその上で転がって体にすりつけるという行動を取りました。

「ん? なんだろう?」
好奇心一杯になって探索中

 次に人間の使う香水を試してみました。放飼場のあちこちにスプレーしておきます。こちらもにおいを発見するとその上にあごをすりつけ、転がったりしながら夢中になって体中にすりつけます。しばらくすると飽きてしまうのですが、15~30分間ほど続きます。

ニイナが夢中で転がっています
座るのにもちょうどいいようです

 ある日、乾草の塊に香水を吹きつけておいたのですが、真っ先に利用した子どもたちが飽きて場所があくと、おとなたちもやってきて同じような動きをし、最後にはただの敷物になってしまいました。その日の夕方、ライオンたちが獣舎に帰ってくると、ライオンたちからほのかに香水(某有名高級ブランド)の香りが……。

 このような工夫は、同じように準備しても毎日だと飽きてしまうので、種類や場所を変え、不規則に実施して変化をつけるためです。また、動物にとって危険がないか、安全面も事前にしっかり検討しています。楽しんでいるライオンたちのようすをどうぞご覧ください。

・イチゴとニイナのこれまでの記事
 「ライオンの赤ちゃん、名前決定!」(2015年5月24日)
 【動画】「ライオン『イチゴ』と『ニイナ』誕生」(2015年6月10日撮影)
 「ライオンの赤ちゃん『イチゴ』と『ニイナ』成長中」(2015年6月19日)
 「ライオンの子どもたち、ライオン園デビュー!」(2015年8月13日)

〔多摩動物公園北園飼育展示係 松井由希子〕

(2017年02月10日)


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