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オオヨシキリの展示、その後
 └─2015/06/26

 多摩動物公園では2014年9月から、アジア園のバードケージでオオヨシキリ2羽(オス1羽、メス1羽)の飼育・展示を始めました。

・昨年のニュース「ギョウギョウシの展示」(2014年9月26日)

 もっとも心配していたのは、東京の寒い冬を越せるかということでした。以前井の頭自然文化園でもオオヨシキリの飼育をしたことがあり、初めての冬を越せれば長期の飼育も可能と聞いていました。結果を先に言いますと、2羽とも無事に越冬し、元気に過ごしています。


 冬は、紐で吊った爬虫類用のパネルヒーターの上で目を細めながら寒そうにしていましたが、朝夕に好物のミールワームを与えると、人を怖がることなく、すぐに近寄って来て食べていました。

 オオヨシキリAcrocephalus orientalis は夏季に日本へ飛来しますが、その目的は繁殖です。繁殖地は日本列島のほかにユーラシア大陸東部のモンゴル、ロシア、中国、朝鮮半島からサハリンです。冬季は、東南アジアから大スンダ列島を形成するスマトラ島やボルネオ島、その東側に位置するスラウェシ島、そしてフィリピンなどに渡ります。


 日本で繁殖する個体はフィリピンで越冬している記録があります(山階鳥類研究所『鳥類アトラス』)。フィリピンは熱帯性気候で年間を通じて暖かく、年平均気温は26〜27℃です。一方、四季のある日本は気候の変動が大きく、8月の平均気温はフィリピンと東京で同じくらいですが、1〜2月の平均気温は、フィリピンが26℃程度なのに比べ、東京では6℃くらいになります。


オオヨシキリのすむ水辺のアシ原

 6月に入り、野生の生息地である多摩川では人の背丈を越える高さに茂ったアシ原の中で、オオヨシキリたちの繁殖が始まっていると思われます。ギョッ、ギョシ、ギョ、ギョシケッケッ、カカッ、ギョギョシッ……昼夜にわたる川原での大合唱は、オスが繁殖相手になるメスたちを求めるさえずりといわれています。

 じつは多摩動物公園のバードケージでも、このさわがしい声の展示を目指していたのですが、ギョーギョ…、シー、…ギョゥ…、とやる気なさそうに時々さえずるだけです。なにか危機感が足りずうまくいかないのかもしれませんが、鳴かなくても繁殖するならよしとするか……。現在、思案しながら見守っているところです。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 由村泰雄〕

(2015年06月26日)


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