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多摩のアジアゾウ、苦手なトレーニングメニューは?
 └─2015/05/30

 学校に通うみなさんは、得意な科目や苦手な科目がありますか? 多摩動物公園の3頭のアジアゾウに正式なトレーニングを始めて約2年が経ちますが、開始当時はどの個体も同じくらいのレベルで、トレーニングメニューのできに違いは見られませんでした。しかし今は個体ごとに得手不得手があります。

 
左:前肢にアンクレットをつける練習(アマラ) 右:採血のために耳を出す練習(アマラ)

 おもに訓練しているのは、両前肢や両後肢を上げる練習、繋留するためにアンクレット(厚手の布と金属の留め具で作った用具)を前肢に巻く練習、人が尾に触る練習、採血のために耳を動かす練習です。

以前ご紹介したアンクレット装着トレーニング記事(2014年12月19日)

 たとえば最年少のオス「ヴィドゥラ」(7歳)は好奇心旺盛で食い意地がはっているため、トレーニングに一番熱心ですが、繋留の練習だけは苦手なようです。繋留の練習はまず細いロープを使ってゾウの足に触れることから少しずつ慣らし、最終的にはアンクレットを足に巻けるようにします。ヴィドゥラはロープの感触に慣れてはきたものの、人がロープを巻こうとすると足を引いていやがります。他の2頭がまったく気にしない動作も、ヴィドゥラには気になるようです。

 一方、ヴィドゥラのお姉さん的存在のアマラ(10歳)は、ときどき集中力をなくし、動きが緩慢になるときがありますが、繋留の練習は得意です。今はアンクレットを巻いてもまったく気にしません。しかし採血の練習は3頭の中で一番苦手なので、どの個体よりも慎重にトレーニングを進めています。


人間が尾に触る練習(アヌーラ)

 国内最高齢のオス、アヌーラじいさん(62歳)は3頭の中でもっとも優秀で、今のところ苦手なメニューはありません。しいて言えば、年のせいかこれまで育ってきた環境のせいかわかりませんが、ときどきトレーニングを拒否することがあります。春先などの暖かい日はトレーニングよりも日向ぼっこのほうがいいようで、飼育係がいくら呼んでもトレーニングに応じてくれない時があります。動きは3頭の中で一番のんびりしており、常にマイペースでトレーニングに応じていますが、そこは年の功とでも言いましょうか、一番安定感があります。

 このようにゾウたちの健康管理を目的として始めたトレーニングですが、ゾウの協力がなければおこなうことができません。ゾウのやる気を損なわないように、お互い楽しみながら今後も続けていければと思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 藤本卓也〕

(2015年05月30日)


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