昨年(2008年)6月に多摩動物公園で生まれたモウコノウマのフルールもすっかり大きくなり、そろそろ独り立ちです(フルールの
誕生ニュースと
成長記)。
母親のサーシャにはあらたな繁殖への期待もかかっています。そこで、2009年7月から、それまで一日中母親といっしょだったフルールを夜は1頭で部屋に入れることにしました。フルールは最初あわてて室内をウロウロしていましたが、そのうち落ち着いて餌を食べるようになりました。それでも朝になって外に出るなりサーシャに走り寄り、おっぱいを吸うのが恒例でした。牧草を十分食べ、おっぱいは必要ないと思いましたが、母親に甘えたい行動だったのでしょう。
そして9月末、ついに日中もフルールを母親から離して完全独立させ、2頭いる姉、ダイアナ、エーコと同居させることになりました。同居初日、広い大放飼場に3頭を出すと、おたがい突然の事態に驚いたように走り回りました。姉とはいえ、それまではおたがい壁を隔てた隣の放飼場にいたわけで、直接会うのは初めてですから無理もありません。その日は3頭とも全速力でよく走っていました。
翌日、2番目の姉エーコだけがフルールを追うようになりました。一方で、ダイアナは無関心を決め込んでいます。フルールはというと、距離を置けば追われないのに、追われても追われてもエーコに近づいていくのでした。初めは、へこたれない強さがあるなぁと単純に思っていたのですが、それ以上に、ひとりでいるのが寂しかったのではないでしょうか。
それなのに姉たちは、2頭でフルールを攻撃したりしました。放飼場のすみにフルールを追い詰めると、お尻を向けて後ろ脚で蹴りつけるのです。見ているこちらはヒヤヒヤし通しです。
ところが、同居後10日も過ぎたころ、なんとエーコとフルールが2頭そろって餌を食べるようになっていました。一方、ダイアナとエーコは険悪な雰囲気です。
モウコノウマは群れで生活します。群れの中にも順位があり、エーコはいつもダイアナの後ろをついて歩いていました。そんなエーコの下にさらに妹ができ、状況が一変したのです。その後は、どちらがフルールを味方につけるかで争う日々になりました。今のところ、エーコの方が優勢のようです。今日は3頭が連れ立って歩く姿も見かけました。日々刻々と変化を続けるモウコノウマ三姉妹関係なのです。
写真:モウコノウマ三姉妹。なかよくいっしょに……?
左からダイアナ、フルール、エーコ
〔多摩動物公園南園飼育展示係 小林由里香〕
・東京ズーネットBBの動画「
モウコノウマの親子」
(2008年07月撮影)
(2009年10月30日)