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「モグラのいえ」の今
 └─2009/06/05

 多摩動物公園の「モグラのいえ」は昨年(2008年)5月、多摩動物公園開園50周年にあわせてオープンしました。旧「モグラのいえ」より広くなり、展示個体も増え、活動中のモグラやトガリネズミを見るチャンスも増えました。

 「モグラのいえ」では、日本産モグラ8種類のうち、アズマモグラ、コウベモグラ、ヒミズを飼育展示しています。アズマモグラのうち1頭は、2003年9月から飼育しており、まもなく6年。モグラの長期飼育記録を更新中です。飼育下のモグラに関する出産や成長の報告は少なく、寿命もよくわからないのですが、この長期飼育個体によって寿命に関する貴重なデータが得られそうです。

 アズマモグラの生息地は、おもに箱根より東側です。園内でよく見られるモグラのトンネルやモグラ塚もすべてアズマモグラが作ったものです。モグラは100 メートル四方程度の縄張りをもち、単独でくらしているといわれます。ですから、庭にモグラ塚がたくさんあっても、モグラは1頭しかいないのです。

 コウベモグラは箱根より西に生息しています。私たちは静岡県富士宮市の牧草畑でコウベモグラを捕獲しているのですが、牧草が刈り取られた直後はモグラ塚やトンネルがよく見え、トラップも設置しやすくなります。また、農家で乾草を作る際、刈り取った草にモグラ塚の土が混ざると乾草が腐ってしまうため、モグラ捕獲にともなうモグラ塚の減少は農家の方にも喜ばれています。

 ヒミズは2007年から展示を始めました。町田市和光高校の先生に寄贈していただいたのがきっかけですが、その後は園内でも捕獲しています。モグラは土の中でトンネルを掘るなど運動をしていますが、ヒミズはあまりトンネルを掘りません。そして、物陰に隠れてジッとしていることが多いせいか、飼育下ではすぐ太ってしまうので、これを防ぐのがこれからの課題です。

 トガリネズミ類は北海道産の2種を飼育展示しています。体重約2グラムで世界最小の哺乳類といわれ、絶滅危惧種に指定されているトウキョウトガリネズミ、そして、体重12グラムのオオアシトガリネズミです。オオアシトガリネズミは、4種知られている北海道産トガリネズミ中で最大の種です。これら2種は、北海道浜中町にある霧多布湿原センターとの共同研究により、2005年から飼育を始めました。2007年、多摩動物公園は浜中町と自然保護のためのパートナーシップ協定を結んでいます。

 2006年から2008年にかけて、ニホンジネズミとカワネズミも飼育していたのですが、残念ながら現在は飼育していません。これらのトガリネズミ類も、あたらしい「モグラのいえ」でぜひ展示したいと考えています。

写真上 :コウベモグラ
写真中上:トウキョウトガリネズミ
写真中下:あたらしい「モグラのいえ」
写真下 :室内展示。トンネルの中を移動するモグラを観察できる

・東京ズーネット動画「モグラのいえ」
 (2003年09月)(※旧施設です)

・ニュース「トウキョウトガリネズミ初公開
 (2005年08月)

・東京ズーネット動画「トウキョウトガリネズミ
 (2006年02月撮影)

・ニュース「浜中町とパートナーシップ協定を締結
 (2007年04月)

・ニュース「モグラ舎リニューアル
 (2008年05月)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 菊地文一〕

(2009年06月05日)



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