暗く、冷たく、水圧のかかる特殊な環境の深海。そこには、不思議な姿や生態をもつ生きものたちがくらしています。さまざまな深海の生きものたちをより多く見てもらいたい! 「深海の生物 トピック水槽」はその思いから誕生しました。
過去の「深海の生物 トピック水槽」での展示生物紹介
(葛西臨海水族園の公式YouTubeチャンネルはこちら)
現在はクボエビという珍しい深海に生息するイセエビのなかまを展示しています。葛西臨海水族園ではクボエビの展示は約6年ぶりです。
クボエビの特徴は紅白の縞模様をしているとても長い触角です。その根本付近には発音器官があり、こすりあわせて音を発します。イセエビはこの器官で音を出して威嚇するといわれていますが、クボエビがなぜ音を出すのか、はっきりとはわかっていません。
クボエビ
現在展示中の個体は、昨年4月に駿河湾の水深約230m地点で底引き網漁により採集されました。クボエビは、水深50m~360mの砂泥底に生息しているといわれていますが、それ以外のくわしい生態はわかっていません。
展示開始当初は、資料をもとに砂を敷き詰めただけの水槽で飼育を始めましたが、しばらく経ってもクボエビは水槽の隅でじっとしたままで、なんだか落ち着いていないように見えました。ふとバックヤードで飼育をしていたころ、水槽内へイソギンチャク用に入れていたプラスチックケースに入ったり、からだを寄せたりしていたことを思い出しました。展示水槽でもどこかに隠れる場所があった方が落ち着くのではないかと考え、いくつか岩を入れてみたところ、さっそく岩の隙間に隠れるようすが確認されました。
しかし、クボエビは岩の隙間にぴたっと入ってしまい、観覧側から見えるのは長い触角だけになってしまったため、岩の位置を何度か調整し、クボエビが岩の隙間に隠れつつ、姿が見えるレイアウトに変更しました。もしかしたら、クボエビは深海の砂泥底に点在する岩に身を寄せてくらしているのかもしれませんね。
岩と水槽壁面の隙間に隠れるクボエビ
「深海の生物 トピック水槽」では、そのときどきで展示する生物が変わります。ぜひこの機会にクボエビに会いに来てください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 御子神〕
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