葛西臨海水族園の「世界の海」エリアの「チリ沿岸」水槽では、ピコロコ、アッロペトロリステス プンクタトゥス、カチュディート、など不思議な名前の生き物たちを展示しています。そのなかでも、今回は「アッロペトロリステス プンクタトゥス」(以下、プンクタトゥス)をご紹介します。
プンクタトゥスは、一見カニのようですが、じつはヤドカリに近く、「カニダマシ」と呼ばれるグループに属します。カニとカニダマシを簡単に見分ける方法は、はさみ脚以外の脚の数を数えることで、4対あればカニ、3対あればカニダマシです。
元の細かい毛の生えた器官を水流に向けるアッロペトロリステス プンクタトゥス
このプンクタトゥスは、世界最大のカニダマシのなかまで、立派なはさみ脚を持っています。強そうな見た目をしているので、大きなものをわしっと掴んで食べそう……と想像してしまいますが、じつは、ごく小さなプランクトンを食べています。チリ沿岸には、栄養豊富なフンボルト海流が流れているため、大量に繁殖するプランクトンのおかげでここまで大きくなるのかもしれませんね。
水族園では、えさとしてブラインシュリンプと呼ばれる甲殻類の幼生や、エビ用の配合飼料などを与えています。水槽内には常に水流を発生させていて、えさを流し込むと、写真のように水流に向かって、口元の細かい毛の生えた器官をせっせと動かしてえさを捕らえ、食べ始めます。このえさをかき集めて食べるようすは、同じ水槽の他の生物の食べ方に似ていると思いませんか。よく見ると、そのようすは、ピコロコ(フジツボのなかま)がえさをかき集めて取り込むようすにそっくりなのです。こんなに外見は違うにも関わらず、両者とも小さい熊手のような器官を水流に向けて開き、小さいえさをかき集めて食べています。熊手のような形の器官がいかに小さいえさを集めるのに効率的な形態なのか、実感できた瞬間でした。
熊手のような形をしている口元の器官
ピコロコの採餌器官も、プンクタトゥスの口元の器官とそっくり
じつはそっくりな器官をもち、プランクトンを効率よく食べる生き物たちを、ぜひじっくり観察してみてください。給餌時間は明確に決まっていませんが、およそ10時、13時半、15時頃におこなわれています。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 川上七海〕
◎関連ニュース
・
アッロペトロリステス プンクタトゥスの不思議な魅力(2019年05月24日)
(2024年03月15日)