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水族園生まれのカチュディートが展示デビューしました!
 └─ 2023/12/28
 2023年9月30日に、葛西臨海水族園の「世界の海」エリアにある「チリ沿岸」の水槽へ、水族園生まれのカチュディートをデビューさせました。


「チリ沿岸」の水槽

 カチュディートは南アメリカ大陸のペルー共和国からチリ共和国にかけての南東太平洋に生息するイソギンポ科のなかまです。岩場を好み、同じ岩場に生息する世界最大級のフジツボのなかま、ピコロコの殻を巣穴として利用するため、「ピコロコブレニー」とも呼ばれます。

 今回、展示へデビューした個体は2019年2月に水族園の職員が実際にチリの海に潜って、採集した個体がバックヤードで産卵し、孵化したものをわれわれ飼育係が育てたものです。

 バックヤードで飼育しているカチュディートがピコロコの殻の中に産卵し、オスが卵保護していたため育成を試みました。まず、卵が産みつけられているピコロコの殻と、卵保護しているオスごと仔魚を育成する別の水槽に移動させました。その後、3週間ほどで全長約4mmの仔魚が孵化しました。孵化した仔魚は水槽内を漂って生活しており、親とは似ても似つかない姿をしています。


生まれたばかりのカチュディート

 えさは仔稚魚の口の大きさに合わせて選びます。カチュディートにはまず、大きさ0.2mmほどのシオミズツボワムシという生きたプランクトンを与えました。その後、全長10mmほどまで成長したころに、シオミズツボワムシよりも大きい孵化したばかりのブラインシュリンプという甲殻類のなかまに切り替えました。そして、親と同じような姿形の稚魚になり、水槽の底ですごし始めたころからは配合飼料やイサザアミのなかまを与え始めました。

 このように仔稚魚の成長に合わせてえさの種類やサイズも変えていきます。大きく成長し、親と同じ大きさ・模様になるまで成長したため展示へデビューさせました。


シオミズツボワムシ(左)、ブラインシュリンプの幼生(中央)、イサザアミのなかま(右)

 現在、「チリ沿岸」の水槽でもオスが巣穴としているピコロコの殻内にメスが入って産卵し、オスが卵保護しています。ご来園の際は、卵保護しているオスをぜひ探してみてください。


卵保護中のオスのカチュディート。殻の中に見える茶色い粒が卵

 葛西臨海水族園では、自然の海からの採集だけに頼らず、繁殖させて展示を維持することにも力を入れています。これからもより多くの生物を繁殖、育成できるように挑戦していきます。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 関啓汰〕

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