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メガネモチノウオの繁殖をめざして
 └─ 2021/10/29
 葛西臨海水族園の「世界の海」エリアに入ってすぐの一際大きな「南シナ海」水槽では、その海域に生息する大小さまざまな魚を展示していますが、今回はメガネモチノウオの2尾同居展示への取組みをご紹介します。

 メガネモチノウオという名前にあまり聞き覚えがないかもしれませんが、別名の「ナポレオンフィッシュ」はご存じの方も多いのではないでしょうか。また、性転換する魚として知られており、メスとして成熟した後、群れのなかで体の大きな個体がオスになります。


メガネモチノウオ

 メガネモチノウオは、成長すると全長2mにもなる世界最大のベラのなかまです。自然界では乱獲や環境破壊などの影響により、国際保護連合(IUCN)で絶滅危惧種(EN)に指定されています。

 都立動物園・水族園では、飼育展示する希少動物の保護・繁殖を図る「ズーストック計画」を策定しています。本種も計画種に選定され、その繁殖をめざして今回、2尾を同居させました。そのために2つの課題がありました。

 まずはじめに、他の生物との同居です。「南シナ海」水槽では昨年まで100㎝ほどのメガネモチノウオ1尾に加え、全長150㎝ほどのハタのなかまであるタマカイ2尾を展示していました。以前、そこに60㎝ほどのメガネモチノウオを入れたところ、タマカイと先住の個体に追い回されてしまったため、いったんバックヤードに避難させました。

 その後、先住の個体は残念ながら死亡してしまいました。そして、特に追い回していたタマカイ1尾をバックヤードに移動させることで、この水槽で同居飼育する準備を整えました。

 次に、なかまどうしでのケンカです。メガネモチノウオは同じ種で激しいケンカをすることがあるため、今回はバックヤードで展示水槽に出す準備をしていた、先の60cmほどの個体を含む2尾を同時に水槽へ入れることで、互いの干渉がなるべく小さくなることを期待しました。

 結果として、お互いをやや気にするようすが見られましたが、ケンカをすることはありませんでした。タマカイを気にするそぶりは見せるものの、タマカイが新入りたちを追い回すことはありませんでした。


水槽内を泳ぎ回る2尾

 現在、メガネモチノウオはどちらもえさをしっかり食べ、2尾が水槽内を泳ぎ回る姿を見ることができます。

 今回同居させた2尾のうち、どちらがオスになるのかわかりませんが、いつか水槽内で産卵行動が見られるよう、引き続き健康に成長させていこうと考えています。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 関啓汰〕

(2021年10月29日)



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