2015年9月から、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「小笠原の海2」水槽でニセカエルウオの展示を始めました。ニセカエルウオは、大きくなると全長13センチほどになるイソギンポ科の魚です。日本では八丈島や屋久島、琉球列島などに分布し、潮だまりなどに生息しています。
今回展示した個体は今年2月に小笠原で採集したものです。水槽に慣れ、えさを食べ始めるまでが早く、バックヤードで飼育していたときは、水槽をのぞくだけで飛び出さんばかりの勢いでした。しかし、ニセカエルウオ自身はとてもえさに対して積極的なのですが、上からまかれたえさを食べるのは苦手なようでした。はっきり言ってしまうと、「へた」なのです。ニセカエルウオがえさのかけらを一つ、二つ食べるあいだに、他の魚に残りを食べられてしまうのです。
ふだんはあまり泳ぎまわらず、岩に付いた藻や小型の甲殻類などを食べるので、水中を漂うエサをキャッチするのには慣れていないのでしょう。そこで、同居生物の組合せを変えたり、仕切りをつけて単独にしたり、ニセカエルウオが十分にえさを食べられる環境を作りました。
「小笠原の海2」は磯を再現した水槽です。他の魚もいるので、ニセカエルウオがえさをしっかり食べられるか心配しましたが、大きな口をよく動かし、岩に付いた藻を食べ、すっかり落ち着いたようです。
この水槽は、岩の上を跳びはねながら移動するタマカエルウオや「切れ」のある動きを見せるオオイワガニなど、水上に目が行くかもしれませんが、水中で本領を発揮しているニセカエルウオにもぜひご注目ください。
・関連記事「
オオイワガニのその後」(2015年4月10日)
〔葛西臨海水族園飼育展示係 戸村奈実子〕
(2015年10月09日)