前回、葛西臨海水族園の「北極・南極の海」コーナーの展示再開について
お知らせしましたが、今回は水族園で初めて展示する魚、サドルドイールパウトを紹介します。
サドルドイールパウトは、おもに北極海や東シベリア海などに生息するゲンゲ科の魚です。展示している個体の大きさは全長40センチ程度で、ほぼ成魚のサイズといえます。
その独特の容姿は一度見たら忘れられないでしょう。体は長細く、こげ茶色をしていますが、うろこがあまり発達していないため皮膚はやわらかく、体を曲げるとしわができます。顔も大変ユーモラスです。目は小さめで、頭の上の方に左右寄り気味についています。吻の先近くには煙突状に飛び出した2つの鼻があります。口は上あごに隠れて見づらいのですが、よく見ると下向きに大きく開いているのがわかります。
サドルドイールパウトは、ふだんは水槽の底でじっとしていることが多いのですが、ときどき目をきょろきょろさせてあたりを見回すしぐさには愛嬌が感じられ、職員の中には「カワイイ」という者も少なくありません。さて皆さんはどう感じるでしょうか?

左:サドルドイールパウト 右:愛嬌のある顔
この個体は、2011年にカナダのバンクーバー水族館から来ました。当時の大きさは全長10センチ程度で、体には幼魚に見られる縞模様がありました。
バンクーバー水族館は2009年8月にカナダのレゾリュートで卵を採集し、約1℃の水温で育て、孵化したのは約4か月後の12月だったそうです。温暖な海域の魚の場合、水温にもよりますが、1日前後で孵化する種類も多く見られます。それに比べ、4か月はとても長い時間です。卵が産み落とされた日はわからないので、ひょっとしたらもっと時間がかかるのかも知れません。

左:サドルドイールパウトの卵(バンクーバー水族館提供) 右:来園当時の幼魚
サドルドイールパウトの繁殖行動はよくわかっていません。水族園では現在6尾を飼育しています。将来に向けて繁殖にも取り組んでいこうと思っています。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 高濱由美子〕
(2015年05月08日)