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深海生物のなぞを解明する──メンダコ飼育展示へのチャレンジ
 └─2015/04/17

 深海生物に注目が集まることが多い昨今ですが、その中でも注目されているのがメンダコです。メンダコは水深200〜600メートルの深海にいるタコのなかまです。丸い扁平な体は UFOを思い浮かべますが、頭のてっぺんには可愛らしい耳のようなひれが生えています。

 深海生物の一つであるメンダコの生態は未知の部分が多く、その解明のためにも葛西臨海水族園では長年、メンダコの飼育に取り組んできました。

 メンダコの体はぶよぶよで柔らかい寒天質のため、私たちにとってメンダコ採集の唯一の手段である深海底曳網では傷がつきやすく、また、無傷のよい状態のものでも、なぜか長期飼育は難しかったのです。そのため、水族園における最長飼育記録は20日間でした。


葛西臨海水族園に到着したばかりのメンダコ
(生物保護のために赤色のライトを使用しています)

 これまでの経験をふまえ、網をひく時間を短くしたり、なるべくメンダコにストレスがかからないように運んだりするなどの工夫をおこなってきた結果、2015年3月17日に採集されたメンダコは、とてもよい状態で水族園にやってきました。

 これまで各種文献を調べることはもちろん、他の水族館から情報を集めたり、メンダコを解剖したりして特徴を調べるなどし、メンダコに適した飼育環境を模索してきました。


メンダコを飼育している非公開エリアの水槽

 これまでの飼育経験などから、メンダコが光に対して過敏に反応する行動が確認されたため、先輩職員とも相談し、今回、真っ暗にした水槽を非公開エリアに用意しました。するとメンダコは水槽の底で落ち着いたようすを見せ、なんと5日後にはえさを食べ始めたのです。その後もえさをよく食べていましたが、残念ながらこの記事が出る前に死んでしまいました。しかし今回、葛西臨海水族園での飼育記録は30日間に更新することができました。今後、死亡の理由を解明し、さらに長期の飼育を目指します。

 今回、メンダコがえさを食べるようすを撮影したところ、貴重な動画が撮れました。動画は下記リンク先の記事でご紹介しています(写真はリンク先の記事より)。

続・新たな視点で見てみると(51)──ふわり、パタパタ、もぐもぐ?メンダコの食事


 メンダコを1か月間飼育できたのは、ご協力いただいている深海底曳網の漁師さんはもちろん、職員たちで取り組んできた成果です。今後は、真っ暗な中でもメンダコの姿が見られるよう、展示の工夫に取り組んでいきます。ユーモラスな動きを見せてくれる深海の生きものメンダコが水族園で見られる日を楽しみにしていてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕

(2015年04月17日)


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