井の頭自然文化園水生物館で今年繁殖したカエルの話題ラストです。前回(オタマジャクシ)の後編にあたるので、そちらをまだ読んでいない方はぜひまず前編からお読みください。
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続々・新たな視点で見てみると[22]──オタマジャクシはカジカジカジ:トウキョウダルマガエル幼生の食事(2018年12月07日)
ゆでたホウレンソウなどを食べて充分に育ったトウキョウダルマガエルのオタマジャクシは、後肢、そして前肢の順に足が生え、その後いよいよ上陸です。呼吸の方法は水中でエラ呼吸をしていたものが肺呼吸へと劇的に変わりますが、食性もおもに植物をかじり取っていたものが、昆虫などを丸呑みにする肉食性に変化します。
トウキョウダルマガエルの幼体。上陸後10日ほどかけて尾が取り込まれてなくなり、
体内でも肉食へ対応するための変更がおこなわれる
体長2.5センチほどの幼体が小さなコオロギを捕食するシーンを撮影しました。スローモーションで見ると、ジャンプすると同時に、眼を保護するための瞬膜を閉じています。着地点に近づくと口を開き、舌を伸ばして獲物を捕らえます。体勢も整わないうちに、舌で捕らえた獲物を前肢を使って口の中に押し込んでいます。体勢が落ち着いてくると瞬膜が開かれ、もう一度前肢で獲物を押し込みました。最後には目をつぶって眼球が口の中に押し込まれます。この動きによって獲物を飲み込みました。
【動画】トウキョウダルマガエルの幼体にコオロギの幼虫を与えた。10倍の
スローモーションで撮影し、映像冒頭は実際のスピードに変換してある
捕食に失敗した映像も見てみると興味深いものでした。このシーンではコオロギは右手前から左側少し奥に進んでいます。しかし、カエルが跳びかかる直前に動きを止め、カエルの舌は少し奥側に着地しました。カエルの視覚は動いていない物をうまく捉えられないようですが、もしかするとコオロギの動きを予測した着地点だったのでしょうか。
【動画】捕食失敗。偶然かもしれないが、コオロギの移動先を予測して跳びかかったようにも見える
屋外で飼育しているカエルたちは冬眠に入っていますが、水生物館内では温度を保った環境で元気なカエルたちを展示しています。ぜひ会いに来てください。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕
(2018年12月14日)